話題の最新著書『日本経済を創造的に破壊せよ!』でアベノミクスが目指すべき戦略を明快に示した伊藤教授。新連載第2回では、国債暴落と金利急騰への懸念を見据えつつ、この国にはびこるデフレマインドを払拭する方策を示す!
大きな転機
ここ数年、私はいろいろな場で次のような発言をしてきた。「私たちはこれまで10年の見慣れた日本経済の光景を前提にして、これから先の経済を考える傾向がある。しかし、それでは今後の経済の動きを読み誤ることになるかもしれない」と。
1951年静岡県生まれ。東京大学大学院経済学研究科教授、総合研究開発機構(NIRA)理事長。安倍政権の経済財政諮問会議議員。経済学博士。専門は国際経済学、ミクロ経済学。ビジネスの現場を歩き、生きた経済を理論的観点も踏まえて分析する「ウォーキング・エコノミスト」として知られる。テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」コメンテーターなどメディアでも活躍中。著書に最新刊『日本経済を創造的に破壊せよ!』(ダイヤモンド社)等多数がある。
これまでの10年のキーワードは「デフレ」である。景気が低迷しており、物価や賃金も低下傾向、金利は低金利であった。消費者も企業も支出を控え、ひたすら貯蓄を積み上げていった。その貯蓄資金の大半は、金融機関を通じて国債の購入に回る。大量の貯蓄資金があるので、当面の国債の消化には困らない。日銀の金融緩和ということもあり、国債利回りは1%を切るような超低金利の状態が続いている。
だが、こうした状態が永遠に続くはずはない。国債をはじめとする公的債務の金額は積み上がる一方で、ついに1000兆円を超えてしまった。それにもかかわらず、まだ政府は新規国債を発行し続けている。この無理なプロセスは必ずやどこかで終焉を迎えるはずだ。
その引き金を引くのが、国債価格の暴落、つまり金利の高騰になるのではないか──これは経済学者でなくても、だれもが思いつくことだろう。
国債価格の下落がどういう形をとるかはわからない。欧州で起きたような暴力的な金利急騰か、あるいはもう少し穏やかな金利上昇か。どちらになるかで経済への影響は大きく異なるが、いずれの場合も経済の動きは大きく転換することになる。