大手電力会社でつくる電気事業連合会(電事連)は15日、中部電力の林欣吾社長を次期会長に充てる人事を発表した。現会長で九州電力の池辺和弘社長は異例となる丸4年の任期を終える。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、今春から林体制でスタートする電事連、そして中部電の社内権力構造の行方を占うほか、中部電の次期トップ候補の実名も挙げる。(ダイヤモンド編集部 土本匡孝)
「中3社」の順番では関西電力だったが
“カルテルアレルギー”で中部電力に?
電力業界で注目だった業界団体トップ人事は、カルテル事件の“主犯”は避けて“業界三男坊”で決着――。
大手電力会社でつくる電気事業者連合会(電事連)は15日、4月からの次期会長に中部電の林欣吾社長(63歳)を選出したと発表した。この日の各社社長による話し合いの場で、現会長で九州電力社長の池辺和弘氏が林氏を推挙し、満場一致で決まった。
業界トップ3を意味する「中3社」以外から初めて会長に就任した池辺氏は、任期丸4年で退任する。
次期会長の下馬評に上がっていたのは、業界3位の中部電の林氏と、業界2位の関西電力社長の森望氏。両社とも23~24年にかけて公正取引委員会が処分を下したカルテル事件の当事者だ。
中部電は二つの事件において処分が下り、関電は複数の大手電力会社の間であった事件で“主犯”として立ち回ったと認定された。なお中部電は23年に処分が出た事件では否認し、公取委を相手取って処分取り消し訴訟を起こした。
いずれにせよ、クリーンなイメージが求められる業界トップとしての資格は「五十歩百歩」だった(詳細は3月12日配信『電力業界団体トップ人事が今週決着へ!関西電力・中部電力ともに「すねに傷」も、優勢なのは?』)。
この日の会見で、人選の理由を問われた池辺氏は「信頼を置けるし造詣も深い。物事の本質を考える方。リーダーにふさわしい」「(中部電のカルテル事件は)過去の事案であって、よりコンプライアンスの高みに向けて進んでいらっしゃるということを考えて適任」などと説明。林氏は「日本のインフラを支えるセクター。魅力ある業界にしていきたい」と抱負を語った。
カルテル事件の当事者だった中部電ではあるが、林氏は電事連会長として、業界全体に向けられた不信感を払拭していくことが責務となる。
なお中部電自身も既に4月からの役員人事を発表している。実は、この役員人事は業界に衝撃を与えた。林氏の電事連会長就任の背景に、中部電社内の権力構造の変化を見る向きは多い。次ページで、次期業界団体トップのお膝元である中部電力で生じた権力構造の変化の中身に加え、林氏の次の中部電社長の有力候補の実名も明らかにする。