企業の集団健診も今は昔。一応、春の健康診断(健診)シーズン間近である。
国立国際医療研究センターの研究グループは、全国健康保険協会が保有するおよそ4000万件の健診・診療報酬明細データから、健診で高血圧や高血糖などのリスクを指摘された人の「その後」の受診行動と、入院・死亡リスクとの関連を調べている。
ハイリスクとした条件は、(1)収縮期血圧160mmHg以上、または拡張期血圧100mmHg、(2)空腹時血糖130mg/dL以上、またはHbA1cが7.0%以上、(3)LDL-コレステロール値180mg/dL以上(男性のみ)、(4)尿蛋白2+以上で、すでに高血圧症、2型糖尿病、脂質異常症と診断されてもおかしくない状況なのに、何の治療も受けていないケースだ。
この条件で抽出された男女41万2059人(35~74歳)を、健診後12カ月間の受診時期で「早期(健診後3カ月未満での受診)」「中期(同4~6カ月)」「後期(同7~12カ月)」「受診なし」の4群にわけ追跡した。
追跡期間中(中央値4.3年)、脳卒中、虚血性心疾患、心不全での入院、または死亡したケースは1万5860人におよんだ。
受診時期との関係では、「受診なし」と比較し、少なくとも1年以内に受診した人は、入院・死亡リスクが明らかに低かった。
また、受診時期が早いほどリスクが下がり、特に「早期」受診では、全ての項目で有意に入院・死亡リスクが低かった。とりわけ脳卒中と心不全による入院については、より恩恵が大きいことも明らかになっている。
本研究の対象者は、これまでに心筋梗塞などの大病を経験していない人々だ。健診でリスクを指摘されても、「忙しいから」「今まで元気だったし」と受診を先延ばしていたろうことは想像に難くない。
ちなみに「受診なし」群は「受診あり」の3群より、年齢が若く、リスク因子ではLDL-コレステロール値が高かった。
がっつり食べ、元気に働いていたとしても、いつ突然死が襲いかかってくるかはわからない。リスク発覚後は早期受診を心がけよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)