内向的な人は、いろいろなことに気がつくものの、その場でぱっと気の利く行動ができない……という悩みを持つことがあるのではないだろうか。しかし、気づかいにおいて「内向的な人にも『強み』がある」と勇気づけてくれている本がある。『気づかいの壁』だ。これまでおよそ200社、2万人のビジネスパーソンに向けてコミュニケーションスキル等の研修やセミナーを行ってきた著者、川原礼子氏は、サービスのプロではない一般のビジネスパーソンに向けて「ちょうど良い気づかい」のコツを教えてくれている。
本記事では、本書の内容から、内向的な人も武器にできる気づかいメールの書き方について紹介する。(構成:小川晶子)

気づかいの壁Photo: Adobe Stock

内向的な人が得意な気づかい、苦手な気づかい

 同僚など身近な人が困っていそうなとき、その場でぱっと手を差し伸べることができたらいいなと思う。

 だが、「余計なことかもしれないし…」「出しゃばりだと思われるかもしれないし…」などと迷いが生じ、タイミングを逃してしまう。

 内向的な人は、こういうことが多いのではないだろうか。筆者は内向的な人間なのでよくわかる。

 もしかしたら、人よりよく気がつくのかもしれない。「気がつく」というのは美点だ。

 しかし、それを活かさずにいるのなら、もったいない。

 本書では、気づかいの前に立ちはだかる「余計な一言かも」といった迷いを「自分の心の壁」と表現している。

 気づかいのできる人、気が利く人になるには「自分の心の壁」を超えることが必要だ。

「気づかいの壁」にはもう一つあって、それは「相手の心の壁」。こちらはむやみに越えたりせず、尊重しなければならない。2つの壁を意識して、ちょうどいい気づかいができるようになるのが理想なのだ。

 内向的な人は、どちらかというと「相手の心の壁」を尊重しようとする気持ちが強いと思う。

 たとえば、本書の中で「会議の前に『話を振るからね』と事前に参加者に伝えておく」という方法が紹介されている。

 これは突然「〇〇さん、何か意見はありますか?」と振るのではなく、あらかじめ「あとで話を振るからね」と伝えておくことで、参加者が準備できるという気づかいだが、相手の心の壁を尊重したい内向的な人は、こういった気づかいは得意なのではないだろうか。

内向的な人も、気づかいメールを武器にできる

 さらに、著者の川原礼子氏は「内向的な人にも『強み』がある」と勇気づけてくれている。

特に私が力を入れているのは「メールライティング」です。
人前で話をするときは、どうしてもアドリブ力が試されます。事前に用意したり、戦略を立てたりがしにくいところがあります。
しかし、メールは違います。
どんなに口下手で内向的な人でも、「メール」では力を発揮できます。
だからこそ、武器にできます。(P.53)

 確かに、メールなら瞬発力は必要なく、「自分の心の壁」はすぐに越えられそうだ。

どう伝えるべきか迷うメールでの気づかい3選

 本書には、参考になるメールのコツが多数紹介されている。

 そのなかから厳選して、ここで3つ紹介しよう。

①苦言メールは「困っている」+「提案」で伝える

 苦言を言わないといけないとき、「これはどう伝えるべきか……」と悩んだ経験のある人は多いだろう。苦い言葉は、言われる側も嫌だが、伝える側もエネルギーが要る。内向的な人は、へりくだった文章で伝えようとしてしまうかもしれない。

 しかし、必要以上にへりくだれば、こちらの意図が伝わらず、また同じような事態が起きてしまう。

 川原氏は「困っている」+「提案」のセットで伝えることによって、相手はこちらの事情を理解し、配慮のなかった行動に反省する気持ちが湧いてくると言う。

 メールの文例はこうだ。

今回のオフィス環境改善会議については、参加を見送らせてください。
残業軽減の中、年度末の納期に追われ、1時間でも席を空けることが難しい状況です。
ただ気になるテーマなので、次回は参加したいと思っています。
来期は2月に開催するのはいかがでしょうか。
その頃であれば参加します。(P.207)

②断りメールは「結論」から伝える

 せっかく声をかけてくれた相手を「がっかりさせたくない」「嫌われたくない」という思いがあるから、断るのは大変だ。断りメールもエネルギーが要る。

 しかし、問い合わせた立場からすれば、ダメなときはダメとハッキリ早めに言ってもらったほうが助かる。変に可能性を残したり、返事を先延ばしにされたりすると、次に行くことができない。

 川原氏は「結論→理由→詫び→代案」の順で書くのがいいと述べている。

 相手が一番知りたいことは、「できるのか、できないのか」です。

だから、まずは、「このたびのご依頼ですが、あいにく弊社ではお受けできないことがわかりました。」と「できない」という結論から伝えたほうが親切なのです。(P.216)

③メールの「雑談」に反応する

 たとえば後輩からこんなメールを受け取ったとする。

「先日はランチをご馳走さまでした。お気に入りのお店に連れて行っていただけて、すごく嬉しかったです。入社時の失敗エピソードも、とても参考になりました。」(P.219)

 こうした雑談メールに返信をしない場合、メールを送った後輩は「失礼だったのかも」と悩むかもしれない。一方で、「それじゃあ次はどこどこのお店に~」と長いメールを返せば、後輩もそれに応じなければならなくなってしまう。

何にでも、ほどほどがあります。
「私の経験が参考になってよかったです」くらいの短い反応が、相手の負担にもなりません。(P.221)

 このように本書では、具体的なメール文例とともに、ちょうどいい気づかいのコツを教えてくれている。

 どう伝えようか迷ってしまうような場面でも「気づかい」の力を発揮できるのだ。内向的な人も、そうでない人も、ぜひ手元に置いて活用してほしい。