ただ、だからこそ気をつけなくてはいけません。先ほどの「グーグルエフェクト」にしても、確かにいつでもググれると思って何かを調べた時、その場でググったもの自体の記憶は定着しにくくなるかもしれません。

習慣的にググっていても
記憶力は減退しない

 例えば、小学3年生のひかるくんが、「徳川家康」を検索する。その検索だけで「徳川家康」について記憶するチャンスは、他の勉強法に比べて低くなる。それがグーグルエフェクトです。出てきた結果はいつでもググればいいと思ってしまうからです。

 ですがこれは、ひかるくんの記憶力の減退ではありません。ググって調べたことで、ひかるくんの「徳川家康」に関する記憶のポテンシャル自体が落ちてしまうわけではないのです。ましてやググることが、ひかるくんの全般的な記憶力に影響を与えるわけでもありません。

 現に、ひかるくんがのちに歴史の授業で「徳川家康」を学べば、しっかりと覚えることができる。

 つまり、ググることを習慣化しても、その人自身の記憶力の減退にはつながらないのです。グーグルエフェクトは、ググったこと自体の記憶が、他の学習法よりも残りにくいということを示しているに過ぎません。

 だから、ググること自体で私たちの記憶力が悪くなることはない。ググるだけで「徳川家康」をしっかりと覚えることはできないかもしれない。でも、それは、みんなが学ぶように歴史の授業で学べばいい。

 むしろ、「徳川家康」をググったことで、歴史に興味を持ったり、ものを調べることに面白さを感じて、学ぶことの意欲が上がったりさえするかもしれないのです。

 しかし、かわいい子どものことを案じれば案じるほど、一時的で限定的な効果でも、一生を通じたすべてのことに当てはまるような気がしてしまう。だから「ググったら物覚えが悪くなって、一生この子は歴史のテストでいい点数が取れなくなってしまう」などと心配してしまうのも自然な親心なのです。

 でも、安心してください。ここまでお話ししてきたように、「グーグルエフェクト」がそんなことを引き起こす科学的根拠はありません。