少子化で縮小するランドセル市場において急成長した土屋鞄は、次第に大人向けの革製品でも人気ブランドになった。ただ、大人向けの革製品はすでに競合がひしめき合っている。土屋鞄はどうやって既存市場に新規参入し成功を収めたのか。元COOが解説する。【前後編の後編】(キャリーミー 大澤亮)
>>前編『土屋鞄はなぜ「子どもがほしい」ランドセルをやめたのか?』から読む
大人向け革製品も人気ブランドに
成功に導いた「ズラし」戦略とは?
大手を含めて多くの企業が、「昔は成長していた既存事業が停滞気味」「かといって新規事業を立ち上げるノウハウやリソースはない」「頑張って立ち上げたもののうまくいっていない」といった悩みを抱えているのではないでしょうか?
記事の前編『土屋鞄はなぜ「子どもがほしい」ランドセルをやめたのか?』では、ランドセルという超縮小市場において土屋鞄製作所が大人気ブランドに成長した秘訣を解説しました。そのカギを握るのが、「ズラし」戦略です。
そもそも日本国内でほとんどの事業、既存市場は縮小傾向にあります。競争は激しくなるばかりで、経営問題としては人手不足による採用合戦も深刻です。一方で、外資やスタートアップなど新規参入も比較的容易になっています。そうした中で、この「ズラし」戦略は、業界や企業規模を問わずに応用可能です。
ランドセルは長年、「子どもが選ぶ、子どものための商品」でした。が、土屋鞄はランドセルを、「大人が選ぶ、子どものための商品」にずらしたことで、成功しました。
実は土屋鞄は、記事前編で紹介した4象限の右下の、「大人が選ぶ大人のためのランドセル」でもヒットを生み出しています。ただそれは、いわゆるランドセルではなくて、質の高い本革を使った、大人向けのバックパックのことです。
同社が目指した展開は、ランドセルを購入した顧客層に対して「バッグや財布などの高級革製品」を買ってもらう、より大きな市場への「ズラし」戦略の応用です。ここで成功を収めたキーワードは、「一貫性」です。