好評の「媚びない人生」対談シリーズ。今回は、小倉広氏、木暮太一氏との3人でのスペシャルトーク「「働き方」を考えることは、幸せのかたちを考えることだ」の模様をお届けします。『僕はこうして、苦しい働き方から抜け出した。』(小倉氏)、『僕たちはいつまでこんな働き方を続けるのか』(木暮氏)という、ベストセラー作家3人が考える「成功と失敗」「働き方と幸せの関係」とは。(構成/上阪徹 撮影/石郷友仁)

今日へこんでも、明日いいことがある

小倉 いいことと悪いことって必ずイコールだと僕は思っているんです。物は言いようですから、こっちから見ればいいことだし、こっちから見れば悪いことだし。木暮さんの場合も、大変な思いをしたから、後で認められることになった。

 僕もそうでしたけど、若いころって、それがわからないわけです。だから、この体験は普通に考えたら悪いことだ、と捉えてしまう。でも将来、それがなかったら今の自分がないと考えられるようになったら、絶対的にいいことなんですよ。木暮さんの場合みたいに。それに気づけないから20代のころって、悪いことをゼロにしようとするんですよね。僕もそうでした。いやなことから逃げようとする。悪いことをゼロにしようとする。

 わかりやすく言うと、失敗をゼロにして成功を一〇〇にしようと思うわけですけど、それってありえないんですよ。失敗なくして成功はないんだから。成功したければ失敗するしかない。いやなことといいことは必ず人生でイコールなんです。

ジョン・キム(John Kim)
作家。元慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授。韓国生まれ。日本に国費留学。米インディアナ大学博士課程単位取得退学。中央大学博士号取得(総合政策博士)。ドイツ連邦防衛大学博士研究員、英オックスフォード大学客員上席研究員、米ハーバード大学インターネット社会研究所客員研究員、慶應義塾大学デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構特任助教授等を歴任。アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5カ国を渡り歩いた経験から生まれた独自の哲学と生き方論が支持を集める。著書に『媚びない人生』(ダイヤモンド社)、『真夜中の幸福論』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、訳書『ぶれない生き方』(スティーブ・ピーターズ著 三笠書房)がある。

 サイコロを転がすと一から六の確率って、一が出る確率、二が出る確率って、数多く回せば限りなくイコールになるということと同じで、いいことと悪いことは必ずイコールになってくる。そういう意味では、悪いことを避けるって、すごくばからしいことなんです。でも、それがわからないんですね、20代のころって。

 だから苦しい。でも、よく言われるように、苦しいのはチャンスだとわかってくると変わって来る。ピンチはチャンスだとか、苦労は買ってでもしろ、というのは、やっぱり年を取ってくるとやっとわかってくるという気はしますね。何百年、何千年、同じことを繰り返しているんだろうな、人間は、と思います。

木暮 僕がすごく大事にしている言葉で「塞翁が馬」という馬の話があるんです。ご存知ない方のために簡単に言うと、馬がいました。その馬に乗ったら落馬してしまいました。何だ、この馬は自分をケガさせやがって、と最初は感じるんですが、そのあと、朝廷が来て、健康な男子は全員戦争に行け、という話になるんです。ところが、本人は落馬してケガをしているので戦争に行って死ななくて済んだ。

 今、小倉さんがおっしゃったのは、悪いことはいいことであり、いいことは悪いことにつながる、というコインの裏表ですよね。僕はこれをすごく最近は意識していまして、もし何か悪いことがあっても、これはいいことにつながるんだ、とがんばって思うようにしているんです。
 でも、まだ全然できていないので、自然には思えないんですけど(笑)。それでも、がんばって思うようにしているんですよ。

 がんばって思うようにすると、何か、楽になるんですね。今日へこんだときも、明日はいいことあるんじゃないかとか。マイナスをプラスでカバーしようとしているということを最近はよく考えています。