具体的でなく、抽象的な目標をつくる
木暮 僕の場合は他人に貢献するっていうところが、小倉さんの言葉を借りると、まださせていただく幸せの手前の段階なんですが、自分自身がどう健康で負債がなく良心にやましいところがない生き方ができるかということを考えています。それに照らし合わせて、それが実現できるような働き方を今、しています。
心穏やかにできない仕事をやらない。つまり自分の範囲を超えない仕事はやらない。そうすると自分の範囲を限定して、これから成長しないのという話になっちゃうんですけど、そうではなくて、自分の身の丈が大きくなればいいんですね。自分の身の丈をどんどん、どんどん大きくしていって、身の丈に合った範囲であれば十分心穏やかに仕事ができるというふうに感じているんです。
なので、今の仕事の仕方としては一方でお金をちゃんと稼げる。それこそライスワークじゃないですが、ちゃんとビジネスになる仕事をやりつつ、一方で、自分の身の丈を大きくする、自己投資みたいなことを常にやっているんです。この両輪を常に回していけば、自分が大きくなりながら、その大きくなった自分で余裕をもって仕事ができるというような考え方で今、やっています。
これがいいか、悪いかっていうつもりはまったくないんですけど、そうすることで僕は非常に心穏やかに毎日、日々送れていて、小倉さんがおっしゃるように仕事とプライベートのはざまがないんです。もともとフリーなので平日と休日も、仕事のオンオフもないんですね。基本的に僕は食べてるときと寝ているとき以外はほとんど仕事をしています。
でも、全然いやじゃない。それは身の丈サイズで穏やかにこなせる仕事を選んでいるから。なおかつ身の丈を大きくしてどんどん、どんどん自分のキャパシティを広げていくように今、動いているんだと思っています。
キム 僕の場合は、かなり抽象的です。自分の人生の中で、幸せを構成する要素は四つぐらいだと思っています。一つはおいしい食べものを食べること。二つ目は好きなところに旅をすること。三つ目は愛のある人生を生きること。
愛といっても別に女性に対してだけではなくて、自分が出会うすべての人に対して相手が受け止められないぐらいの愛情を注ぐということです。また、相手が自分自身を理解している以上に僕が相手のことを理解しようとしたり、相手が相手自身を愛する以上に僕は相手のことを愛するということを心がける。そういう愛情を生きている間にどれぐらい生み出せたかによって、自分の幸せが決まるような気がします。
そして最後、四つ目は途方もないことかも知れませんが、歴史に残る本を書くということです。この四つが基本的に自分の中では抽象的な目標で、それにたどり着く道は、学者であっても、経営者であっても、政治家であっても、作家であっても、まったく僕はこだわりがないのです。したがって、固有名詞としてこうなりたいとか、そういうものは、僕は一切ありません。
もっと大きな目指す目標としては、『媚びない人生』にも書きましたが、今日の努力を通じて、より内面的に成熟した明日の自分をつくることです。内面を構成している自分の思考をより賢くする。自分の感情をより穏やかにする。自分が考えていることをより説得力を持たせて伝えていく言葉の力を伸ばしていく。自分の決断と自分の責任で行動する力を身につけていく。
そういう内面的に成熟した強い自分というものを、自分が死ぬその最後の瞬間まで築き上げていく。これが、自分の中で目指す揺るぎのない方向性なので、それより抽象度の低い具体的なものについては、僕は完全に柔軟です。まったくこだわりはないんです。
◆「対談 媚びない人生」バックナンバー
第1回 媚びない人生とは、本当の幸福とは何か 『媚びない人生』刊行記念特別対談 【本田直之×ジョン・キム】(前編)
第2回 大人たちが目指してきた幸福の形では、もう幸福になれないと若者たちは気づいている【本田直之×ジョン・キム】(後編)
第3回 日本人には自分への信頼が足りない。もっと自分を信じていい。【出井伸之×ジョン・キム】(前編)
第4回 世界を知って、日本をみれば「こんなにチャンスに満ちあふれた国はない」と気づくはずだ。【出井伸之×ジョン・キム】(後編)
第5回 苦難とは、神様からの贈り物だ、と思えるかどうか【(『超訳 ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(前編)
第6回 打算や思惑のない言葉こそ、伝わる【(『超訳ニーチェの言葉』)白取春彦×ジョン・キム】(後編)
第7回 いつが幸せの頂点か。それは死ぬまで見えない【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(前編)
第8回 国籍という枠組みの、外で生きていきたい【(『続・悩む力』)姜尚中×ジョン・キム】(後編)
第9回 「挑戦しない脳」の典型例は、偏差値入試。優秀さとは何か、を日本人は勘違いしている【茂木健一郎×ジョン・キム】(前編)
第10回 早急に白黒つけたがる人は幼稚であると気づけ【茂木健一郎×ジョン・キム】(後編)
第11回 やりたいことがたまたま会社だった。だから、自然体で起業ができた。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(前編)
第12回 不安は、将来に対する可能性の表れである。【リブセンス村上太一×ジョン・キム】(後編)
第13回 一番怖いのは、頭が固まってしまうこと【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(前編)
第14回 面接で落とされたおかげで今の自分がいる【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(中編)
第15回 自分を大きく見せようとすると、失敗する【安藤美冬×本田直之×ジョン・キム】(後編)
第16回 自分が自分をしんどくさせている【小倉広×木暮太一×ジョン・キム】(前編)
第17回 やりたいことは簡単に見つからない【小倉広×木暮太一×ジョン・キム】(中編)
【ダイヤモンド社書籍編集部からのお知らせ】
四六判・並製・256頁 ISBN978-4-478-01769-2
◆ジョン・キム『媚びない人生』
「自分に誇りを持ち、自分を信じ、自分らしく、媚びない人生を生きていって欲しい。そのために必要なのは、まず何よりも内面的な強さなのだ」
将来に対する漠然とした不安を感じる者たちに対して、今この瞬間から内面的な革命を起こし、人生を支える真の自由を手に入れるための考え方や行動指針を提示したのが本書『媚びない人生』です。韓国から日本へ国費留学し、アジア、アメリカ、ヨーロッパ等、3大陸5ヵ国を渡り歩き、使う言葉も専門性も変えていった著者。その経験からくる独自の哲学や生き方論が心を揺さぶられます。
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WAVE出版・刊
ISBN 9784872905748
新卒でリクルートに入社、営業、企画、コンサルティング各部署でMVP受賞、同期の上位2%で課長へ昇進、その後ITベンチャー役員となり上場へ……。一見すると華々しく見える著者の経歴の陰に、2度のうつ病を患う苦しい時代があった。本書は著者が体験した「働く苦しみ」とそこから「抜け出す」 きっかけとなった生身を剥き出しにしたような言葉が紹介されている。「会社を変えるな、自分を変えろ」「心を鷲づかみにされる」文章が心に響く「泣けるビジネス書」。
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〈2013年新書大賞〉67人が2012年に出版された新書1500冊から厳選して、第8位!
経済学の古典、マルクスの『資本論』と、世界的ベストセラー、ロバート・キヨサキの『金持ち父さん、貧乏父さん』は、じつは、まったく同じことを言っていた!!なぜ、仕事の合間に生活するような人生を送らなければならないのか?なぜ、努力をしても、成果をあげても、給料は上がらないのか?なぜ、社会が豊かになっても、働き方は貧しいままなのか?そして、どうすればラットレースに巻き込まれない「幸せな働き方」に到達できるのか??それらの答えがこの中にある。
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