<正解>
 あなたの同僚は4人と名刺交換した

 え? いや、解くのは無理なのでは?
 具体的なことが何もわかっていないのに、急に「あなたの同僚が何人と名刺交換したか」とか聞かれても。
 ……ふむ。じっくり考えてみましょう。
 こんなときこそ、状況の整理、可能性の洗い出し、そして俯瞰です。

隠れた前提を見抜けるか

 “「この日に自社の同僚とはじめて会った」という人もいない。”

 問題文の最後にしれっと書かれているこの一文、意外と重要です。
 わかりにくい表現ですが、問題文の前半に「初対面の人とだけ名刺交換をした」とあります。
 そのため、この一文からは「自分の同僚と名刺交換をした人はいない」という事実が導けます。
 これが大きなポイントです。

最大何人まで名刺交換できる?

 「自社の同僚と名刺交換をした人はいない」

 この情報から、最大何人と名刺交換できるかがわかります。

 パーティーに参加したのは、あなたと同僚の1組と、招待客の4組の、合計10人です。
 つまりどの人も「自分」以外の、最大9人と名刺交換できます。
 しかし「自社の同僚と名刺交換をした人はいない」という条件から、実際にはどの人も最大8人とまでしか名刺交換できません。
 そして、

 “「名刺交換をした人数は9人全員が異なっていた」”

 という情報から、あなたの「何人と名刺交換したか」という質問に対する、9人それぞれの答えがわかります。
 それは、

 「0人」「1人」「2人」「3人」「4人」「5人」「6人」「7人」「8人」

 です。

「8人」と名刺交換をした人は?

 選択肢の全体像が俯瞰できたところで、1人ずつ考えてみましょう。
 わかりやすくするために、あなたを「A」、あなたの同僚を「B」とします。
 そして残りの4組8人をそれぞれ、以下とします。

 ・C-D
 ・E-F
 ・G-H
 ・I-J

 まずは「8人と名刺交換した人」について考えていきましょう。
 糸口がない場合は、「最大値」や「最小値」から考えはじめるのがセオリーです。
 とはいえ、現時点で誰が「8人と名刺交換したか」はわからないので、この人物は仮にCだとしましょう。

「自分自身」「自分の同僚」と名刺交換した人はいないので、「8人と交換した」ということは、CはD以外の全員と名刺交換したはずです。

 これにより、「何人と名刺交換したか」が特定できる人がもう1人います。
 それはC(8人と名刺交換した)の同僚であるDです。

「何人と名刺交換したか」という質問に対する9人それぞれの答えのなかに、「0人」という回答がありましたね。
 C,D以外の8人は、全員Cと名刺交換をしています。

 つまり、「0人と名刺交換」が可能なのはDだけです。

「7人」と名刺交換をした人は?

 次に「7人と名刺交換した人」について考えてみましょう。
 仮に、「E」が「7人と名刺交換した人」だとします。
 この人が名刺交換を「していない3人」は、以下のとおりです。

 ・E(自分自身)
 ・F(自分の同僚)
 ・D(0人と名刺交換した人)

 DとF以外の8人は、全員、(8人と交換した)Cと、(7人と交換した)Eの2人と名刺を交換しています。
 そして、Dは誰とも名刺を交換していないと、先ほど判明しています。

 つまり「1人と名刺交換した人」は、Fしかありえません。

「4人」と名刺交換をした人は?

 以降も、考え方は同じです。

 Gが「6人と名刺交換した人」だとしたら、同僚のHは(8人と交換した)Cと、(7人と交換した)Eの、「2人だけと名刺交換した人」となります。
 Iが「5人と名刺交換した人」だとしたら、同僚のJは(8人と交換した)Cと、(7人と交換した)Eと、(6人と交換した)Gの、「3人だけと名刺交換した人」となります。

 こう考えていくと、以下のことが判明します。

 ・C(8人と交換)―D(0人と交換)
 ・E(7人と交換)―F(1人と交換)
 ・G(6人と交換)―H(2人と交換)
 ・I(5人と交換)―J(3人と交換)

 8人がそれぞれ、誰と同僚で何人と名刺を交換したかがわかりました。
 そして最後に、「4人と名刺交換した人」だけが1人残りました。
 この人は、いったい誰でしょう?
 すでに、招待した4組の答えは出そろっているため、「4人と名刺交換した人」は、残されたB(あなたの同僚)です。

「思考」のまとめ

 いっけん不可能そうに見える問題でしたが、可能性を洗い出してひとつずつ仮定と検証をしていった結果、おのずと答えがわかりました。
 まさに論理の力を感じられる問題でしたね。
 このように、全体像を俯瞰したあとは最大値や最小値に着目したり、「もしこれが~~なら」と仮定したりして、とりあえず思考を進めるのも手です。
 すると新たな事実が見えたり、その仮定が間違っていることがわかったりして、しだいに選択肢を狭めていけます。

 糸口を見つけて、俯瞰した可能性を絞り込んでいく
 ・とっかかりがない場合は、ひとまず仮定で考えていく

(本稿は、『頭のいい人だけが解ける論理的思考問題』から一部抜粋した内容です。)

野村裕之(のむら・ひろゆき)
都内上場企業のWebマーケター
論理的思考問題を紹介する国内有数のブログ「明日は未来だ!」運営者。ブログの最高月間PVは70万超。解説のわかりやすさに定評があり、多くの企業、教育機関、テレビ局などから「ブログの内容を使わせてほしい」と連絡を受ける。29歳までフリーター生活をしていたが、同ブログがきっかけとなり広告代理店に入社。論理的思考問題で培った思考力を駆使してWebマーケティングを展開し、1日のWeb広告収入として当時は前例のなかった粗利1,500万円を達成するなど活躍。3年間で個人利益1億円を上げた後、フリーランスとなり、企業のデジタル集客、市場分析、ターゲット設定、広告の制作や運用、セミナー主催など、マーケティング全般を支援する。2023年に現在の会社に入社。Webマーケティングに加えて新規事業開発にも携わりながら、成果を出している。本書が初の著書となる。