この指摘の影響は大きく、現在でも組織間関係論は経営戦略論の重要な領域となっているほどだ。
さらに、リレーショナル・ビューは、主に社会学分野で発展してきたソーシャル・キャピタル論(人間社会には、お金をどれだけ持っているかという経済的資本や、知へのアクセス可能性がどれだけ高いかという文化資本に加えて、相互に信頼できる人が周囲にどれだけいるかという社会関係資本が存在すると指摘する理論)と合流し、近年では「企業・組織のソーシャル・キャピタル論」へと発展してきている。
このように、日本企業が作り上げてきたケイレツというサプライヤー関係、経営技術は、リレーショナル・ビューや組織のソーシャル・キャピタルという概念で、再解釈された。そして、こうして再解釈された理論は、現在でも経営学の主要理論となっているのである。
数年でアメリカのバイク市場の60%超を
奪ったホンダの超合理的な経営戦略
1959年、日本が敗戦から立ち直り高度経済成長期に突入してしばらく経った頃のことだ。当時、アメリカのバイク市場のシェアは約半分がイギリス企業によって占められている状態だった。
しかし、それから1966年までの数年間で、またたく間にホンダがイギリス企業を追い落とし、なんと1社単独でアメリカバイク市場の60%超のシェアを占めるようになった。
いったいホンダはどんな魔法を使ったというのか。
イギリス政府がそんな疑問を持つのも当然だった。イギリスの国益にも影響することだからだ。そこで、イギリス政府はすぐにボストン・コンサルティング・グループに調査を依頼した。
その結果、1975年に報告された調査結果の内容は「ホンダは見事な海外進出戦略を立てたからイギリス企業に勝てたのだ」というものだった。
それまで、アメリカのバイク市場では、もともと若干ガラの悪い人たちが乗りこなす大型のバイクが主流製品であった。ホンダはそこに、普通の学生や女性といった人たちが安価な移動手段として使用する、小型バイク市場というニッチを見つけたというのだ。