台湾の馬英九前総統が
2年連続で中国を訪問
台湾の最大野党・国民党の馬英九前総統が4月1日~11日、中国を訪問した。生涯初の訪中となった昨年(3月27日~4月7日)に続き、「清明節」(先祖を墓参りする中国の祝日)に合わせた形だが、今回は訪れた場所が異なった。
昨年は、上海市から入り、江蘇省(南京市など)、湖北省(武漢市など)、湖南省(長沙市など)、重慶市を訪れ、再び上海市に戻り、同市から帰国した。
一方、今年は、広東省(深セン市など)から入り、陝西省(西安市など)を訪れ、最終目的地である北京市から帰国した。
深セン市では大疆(DJI)、テンセントなどの大手企業を視察し、陝西省では、王朝の都ともなったことのある「中華文明の発祥地」で歴史的遺産、建物、城壁などを見学。そして、初めて訪れた中華人民共和国の首都・北京では、天安門の北側に位置する故宮博物館、北京郊外にある盧溝橋「抗日戦争記念館」などを見学した上で、今回の訪中における最大のイベントである、習近平総書記との会談、その後の晩餐会に臨んだ。
筆者から見て、今回の馬英九訪中は、5つの地方を訪れた前回と比べて、中国側の戦略的な思惑が、より鮮明に表れていた。
中国最大のGDP(国内総生産)を誇る「経済大省」である広東省から入り、漢や唐の時代に王朝の都となり、かつ習近平総書記の出身地でもある陝西省で「中華の文明と歴史」を体感。そこから、中国経済の高度成長を象徴する高速鉄道で、「政治の中心」である北京へ移動し、習近平氏との会談に臨んだのである。この3つの地域を訪問先に選んだのは実に戦略的であったと言える。
また、前回と異なったのは、今回の訪中では台湾の大学生約20人を同行させ、台湾の若者に、中国の視点から「中華文明」を体験させ、かつ中国の大学生と交流させる機会を持った点である。
中国側からすれば、「台湾人アイデンティティ―」を強めている台湾の若者を取り込んでおきたいという思惑があったのだろう。また、馬英九としても、若者を同行させることで、民進党が与党として君臨する台湾社会・世論における今回の訪中が、状況を錯乱させる身勝手な個人プレーと映らないようにしたかったのだろうと思われる。