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春節休暇中の消費は一見好調も
節約志向が見え隠れ

 中国では2月10日から17日にかけ、旧正月である春節休暇を迎えた。今年の春節休暇は例年よりも休暇が1日長く8連休となった。さらに、大みそかにあたる2月9日の休暇取得を政府が企業などに奨励したため、9連休を享受した人々も多かった。

 例年、大型連休となる春節休暇には、帰省して家族団らんを楽しんだり、国内外の観光地に旅行したりする人が多く、一年の中でも最も消費が盛り上がる時期の一つだ。したがって、春節休暇中の消費動向は、中国の景況感をはかるバロメーターとして注目されている。

 今年の春節休暇中の飲食や旅行などのサービス消費は、一見すると好調だった。国家税務総局によると、春節休暇中の全国のサービス消費関連産業の1日当たり売上高は前年比52.3%増と大幅に増加した。

 サービス消費のうち、旅行について見ると、国内旅行者数は4億7400万人、観光収入は6327億元(約12兆6500億円)となった。例年と同じ7連休で換算すると、昨年の春節休暇(1月21~27日)に比べて旅行者数・観光収入がそれぞれ34.7%増、47.3%増と大きく改善した。

 昨年は、一昨年12月のゼロコロナ政策緩和をうけ、感染が急拡大した直後だったため、旅行者数・観光収入はいずれもコロナ前の2019年の水準を下回っていた。だが、今年は2019年対比でそれぞれ19.0%、7.7%の増加、5年ぶりにコロナ前の水準を上回った(下図)。また、オンライン旅行会社の携程集団によると、省をまたぐ旅行が全体の約6割、前年比約2倍となり、ようやく長距離旅行が復活したとみられる。

 しかし、別のデータからは、中国経済の停滞を受けた消費者の節約志向が示唆される。先述の国内観光収入を国内旅行者数と休暇日数で割った1人1日当たりの旅行支出は167元(約3400円)と、前年比4.3%減、2019年対比でも5.7%減少した。

 携程集団傘下のレンタカーサービス・携程租車によると、春節休暇中のレンタカーの予約数が前年比約2倍、2019年対比5倍超となるなど、自動車による移動が急増したことも、節約志向の高まりを反映している。

 また、今年はコロナ後の海外旅行が昨年2月6日に解禁されてから初めての春節休暇だったため、海外旅行動向にも注目が集まった。出入境者数(※1)は1352万人、1日平均では169万人となり、前年比で2.8倍と急増。旅行先では、中国からの短期滞在者に対するビザが最近免除されたシンガポール、タイ、マレーシアなど東南アジアのほか、日本や韓国も人気だった。
(※1)行き先に香港、マカオを含む。

 ただし、1日平均出入境者数は、国家移民管理局による事前予想(約180万人)を下回り、2019年対比でも約9割とコロナ前の水準には至らなかった。所得の伸びが鈍化する中で、海外旅行より国内旅行を選択する人々が多かったとみられる。