断熱性がいい家は
病気になりにくいという事実
それに加えて、断熱性能が良い家だと病気にかかりにくいこともわかっている。これは空気環境を良好にすることによる効果で、温度・適切な湿度・汚れの少なさによるものだ。
近畿大学の岩前篤教授が長年調査した結果によると、引っ越し先の断熱性能のレベルによって持病の改善率が大きく異なるという結果が出ている。アレルギー性鼻炎、手足の冷え、気管支ぜんそく、アトピー性皮膚炎などだ。
この改善率とは、前の住まいで発症していた持病が新しい住まいで発症しなくなった人の割合で、改善度合いはかなり大きい。たとえば断熱性能が5以上(先進国の断熱水準)の場合、改善率は平均6割ほどに及ぶ。2025年以降、新築住宅は省エネ基準適合が義務化され、その場合の断熱性能は4以上となる。断熱性能4だと前述の病気の改善率は4割程度になるが、この際、世界基準の快適さを手に入れることをお勧めする。そうすれば、家族分の医療費も下がることになる。
このように、光熱費・減税・生命保険料・医療費といったコストについて考えることは重要だが、最も重要なのは「命と健康」である。それを顧みないことは自殺行為と言えるが、頭では理解できても、実際に命と健康を守る行動を起こすことは容易ではないかもしれない。そんな人は、断熱性能の高い家を訪れたり、宿泊体験をしたりするといい。注文住宅の住宅展示場だっていいのだ。
どの部屋にいても快適な家は、夏の寝苦しさもなければ冬の朝の起きにくさもないことが、実体験として理解できるはずだ。筆者に関して言えば、これまで暮らしてきた家にはそうした快適さがなかったため、断熱性能が高い快適な家を訪れたときには、「別世界」と思えたほどだ。「快適さ」は、それに価値を感じる人にとってはかけがえのないものなのである。
新築物件の選び方・中古物件のリフォームの仕方については、筆者の中でも知見が深まり、折に触れて読者諸氏にアドバイスできるケースが多くなってきた。自分や家族の健康と寿命は、自分自身のコミットによって大きく変わることを忘れてはならない。