ドンキが「ヤンキーが集まる」店づくりに回帰したワケ、新型店舗“不発”の裏で…Photo:PIXTA ※画像は東京・新宿歌舞伎町店。貝塚店とは異なります

ドン・キホーテが今春、昔ながらの「混沌とした店づくり」を再現した店舗を大阪にオープンした。光るカー用品やカラコンなどの「ヤンキー向け商品」を取り扱っているほか、今では珍しい深夜営業を実施している。その裏側で、東京・渋谷では、プライベートブランドを重点的に取り扱う新型店舗「ドミセ」がひっそりと閉店した。開店から1年未満での撤退である。ドンキの新型店舗が不発に終わり、原点回帰が進んでいる要因はどこにあるのか。小売・流通業界に詳しいジャーナリストが考察する。(流通ジャーナリスト 森山真二)

「大人の店」になったはずが…
「ヤンキーを呼び戻す」新店舗がオープン!?

 ドン・キホーテ(以下ドンキ)が大阪にオープンした新店舗は、時代に逆行したような作りだった――。

 ドンキは4月2日、大阪府貝塚市に「貝塚店」を開業した。貝塚は「だんじり祭り」で有名な岸和田市に近い街だ。この店舗のコンセプトは「ギラギラドンキ」。一昔前のドンキでおなじみだった、商品が所狭しと並ぶ「圧縮陳列」を採用している。

ドンキが「ヤンキーが集まる」店づくりに回帰したワケ、新型店舗“不発”の裏で…ドンキが新たにオープンした「貝塚店」(出典:公式Webサイト
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 さらに、ドンキの成長を支えてきた「松竹梅作戦」(※)をMD(商品政策)に取り入れ、さまざまな価格帯の商品をそろえている。一般的な食品・日用品だけでなく、光るカー用品、香水、カラーコンタクトレンズ、ピアッサー、アクセサリー、キャラクターソックスなどの、いわゆる「ヤンキー」に愛されるグッズを扱っているのだ。

(※)「3つの価格帯がある場合、人間は真ん中を選びがちになる」という消費者心理を応用した戦略。松(高価)・竹(普通)・梅(安価)の商品をそろえ、売りたいモノを真ん中に集めると効果があるとされる。

 そのほとんどが創業時通りに作られている貝塚店は、近年のドンキが失ったものを取り戻そうとしているかのようだ。

 というのも、かつてのドンキはヤンキー客が多く、「改造車」(ヤン車)が爆音を轟かせて駐車場に出入りすることもあった。だが、今のドンキは「ヤンキーが溜まる店」ではなくなりつつある。「圧縮陳列」も少々控え目になり、「POPの洪水」というドンキのお家芸もマイルドになった。「ドンキは大人の店となり、若者から離れた」と指摘されることもある。

 ドンキはそうした指摘を踏まえ、ヤンキー客を呼び戻そうとしているのか――。今回は、意外な「原点回帰」の狙いを読み解いていきたい。