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経営の神様、稲盛和夫氏が鹿児島県霧島市につくった「ホテル京セラ」。稲盛氏といえば日本航空を再建した手腕で知られるが、このホテルには全日本空輸のキャビンアテンダントも訪れる。ライバル企業の職員をも惹きつける「ホテル稲盛和夫」の魅力とは?(イトモス研究所所長 小倉健一)
ANAのCAも使う「ホテル稲盛和夫」
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鹿児島空港から志布志行きのクルマに乗って15分ほどをすぎると、車景に突如、巨大な円柱形の建築物が現れる。地元の人が「稲盛さんのホテル」と呼ぶ、豪華なリゾートホテル「ホテル京セラ」だ。
京セラ、KDDIを創業し、日本航空(JAL)を建て直し、「経営の神様」と呼ばれた稲盛和夫氏がつくったホテルである。私は4月のある金曜日の午後にこの「ホテル稲盛和夫」を訪れた。
ホテルでチェックインをしていると、並びには日本航空のライバル全日本空輸(ANA)のキャビンアテンダントが制服のまま、ペアでチェックインをしていた。
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稲盛氏は日本航空の再建に乗り出す前は、ANAと懇意にしていたようだが、日本航空再建を境にたもとを分かったはずである。今回は、ライバル企業のCAすら利用するこのホテルについて解説していきたい。
ホテル京セラは、1995年に、総工費約100億円をかけてつくられた。「両手の手のひらで優しく“モノ”を包む」という稲盛氏のアイデアを、世界的に有名な建築家・黒川紀章氏が建築設計した。
地下2階、地上13階の円筒形で、1階から13階まで吹き抜けで、大アトリウム空間が広がる。東側のすべてと、天井の一部はガラス張りで、ロビーはとにかく明るい。
3階中央にはチャペルが設置されていて、「タレントさんも結婚式を挙げた」(タクシー運転手)という。
ホテル創業当時、懸念されたのは、近隣のホテルの需要を奪うのではないかということだった。