このように、地域にとっても、まだまだ若いこのミドル期シングルは、地域の活性化に大きな役割を果たす潜在的な可能性を秘めています。ミドル期シングルが地域にとって貴重でかつ有益な人材となるためには何がきっかけ(トリガー)となるのか、今後考えていく必要があるでしょう。

都市部ではシングルがマジョリティ
個人として地域に包摂していく重要性

 これまではミドル期シングルはその人数の多さにもかかわらず、地域にとって「見えない存在」であったといえます。ミドル期シングルは地域の学校行事や商店街の行事にも参加せず、すぐどこかへ引っ越していくのだろう、ハンカーダウン(外と関わらないような様子)している、という意識が我々の中にもあったかもしれません。

 しかし、ミドル期シングルも不動産を購入し、地域で長く暮らそう、という人が増えてきている中で、まだ若く、現役で仕事をしている人たちが地域で知恵を出し、何か役割を果たしてくれることは非常に意味があることです。

 まずは地域がミドル期シングルの存在を認め、彼らの役割を考えていくこと、そしてそれを押し付けではなく、自然に何らかの活動の中で取り入れていくことができれば、双方にとって良いことではないでしょうか。ミドル期シングルは地域活動を絶対にしたくない、と思っているわけではないことが調査から明らかになっています。同時に自分は地域では役割がない、求められていない、と思っている可能性もあります。

書影『東京ミドル期シングルの衝撃 「ひとり」社会のゆくえ』(東洋経済新報社)『東京ミドル期シングルの衝撃 「ひとり」社会のゆくえ』(東洋経済新報社)
宮本みち子・大江守之 編著、丸山洋平・松本奈何・酒井計史 著

 自分の興味があれば、誰か知り合いに誘われれば何かに参加したい、という人も潜在的に存在します。これは、ミドル期シングルをハンカーダウンさせない、いい換えると地域コミュニティに参加してもらうためにも、何かきっかけが必要で、さらに彼らがあまり「浮いた立場」にならないような仕組みが必要、ということなのです。

 であれば、地域でもミドル期シングルが何らかの役割をきちんと担うことができる、そしてミドル期シングルを「家族のいない人」ではなく、ひとりの個人として地域に包摂していくことが可能になります。多様化する現代の都心部、東京の中心ではミドル期シングルはもはやマジョリティです。

 ミドル期シングルを包摂し、ゆるやかにつながる地域を作り上げることは、地域、行政にとって、そして何より当事者たちにとって大切なことです。