現代の日本企業にも
見られる目的のブレ

 日本軍は各作戦においても目的が不明瞭で、現場に徹底されていませんでした。

 ミッドウェー作戦には、ミッドウェー島攻略と誘い出した敵艦隊の駆逐という2つの目的がありました。山本長官は後者を真の目的としていたようですが、現場指揮官の南雲忠一第一航空艦隊司令長官は、ミッドウェー攻略を重視。この目的の食い違いに加え、米国の攻撃機の襲来時期をミッドウェー島攻略の後と予想していたため、空母の航空機は陸用爆弾に転換作業中であり、被害が増大しました。

 レイテ沖海戦においても、米上陸軍の補給を断つため輸送船団を攻撃することが目的であったにも関わらず、栗田健男司令官率いる連合艦隊主力が日本軍の伝統的な艦隊決戦に固執し、中央部の意図と異なる行動を取っています。

 一方、米国は目的が明確でした。ミッドウェー作戦では、目的を日本の空母に限定。太平洋艦隊ニミッツ司令長官は、「空母以外には手を出すな」と厳命していました。ミッドウェー戦について、ニミッツ長官は回顧録で「日本の失敗の原因は2つの目的を持っていたことだ」と振り返っています。

 さて、今日の日本企業においても、このような目的の不明瞭さや、マネジメントと現場との間の理解の不一致による目的のブレは見受けられます。

 よくある例は、新規事業自体の成功を期待しているはずのマネジメント層が、うまくいかなかったときのことを恐れて「新規事業開発を通じて人材を育成する」といった別のメッセージを発してしまうケースです。これでは現場は困難な新規事業の成功を目指さず、人材育成に寄った施策を展開して、「オープンイノベーションを通じた学び」などが成果とされてしまいます。

 また、「新規事業が既存事業に悪影響を与えないようにする」ような姿勢を取ってしまうのも、目的が二重になってしまっている例です。既存事業への依存から新しい取り組みが後回しになれば、結果として新興企業に市場を奪われるリスクがあります。それが分かっているのに、“虫のいい目標”を採用してしまっているのです。