アクティビスト(物言う株主)による日本株への投資が活発になっている。物言う株主の思惑は、企業の株価に大きな影響を及ぼす。特集『バブル再来!株価を動かす重大ニュース 人事、再編、物言う株主の思惑…記者が総力取材』(全18回)の#7では、任天堂創業家の資産管理会社が東洋建設に買収提案した事例を基に、物言う株主の介入がもたらす株価の動向を徹底解説する。(ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)
旧村上ファンドの買い増しで
三井住友建設の株価が急上昇
2月19日、ゼネコン準大手の三井住友建設の株価の終値は443円となり、前営業日に比べて39円(9.65%)上昇した。
大幅上昇のきっかけは17日の引け後のあるニュースである。同日、旧村上ファンド系の資産管理会社などが関東財務局に提出した大量保有報告書で、三井住友建設の株式の保有比率を12.54%に引き上げたことが判明したのだ。
旧村上ファンド系は2021年11月に5%を超える三井住友建設株を取得し、23年春には保有比率を10%超に引き上げていた。2月19日は、旧村上ファンド系による株式の追加取得を思惑視した買いが集まったのだ。
旧村上ファンド系は近年、ゼネコン業界を主な標的としてきた。20年春ごろには、ゼネコン準大手の西松建設の株式取得が判明。業界再編を訴える旧村上ファンドと西松建設の対立がしばらく続いた。
だが、21年12月に西松建設が伊藤忠商事と資本提携を発表した。伊藤忠が、旧村上ファンド系から西松建設株を取得し、筆頭株主となったのだ。伊藤忠が「ホワイトナイト」となる形で騒動は終息した。西松建設の株価は、旧村上ファンドの介入時から2年弱で7割近く上昇した。
物言う株主の介入は株価を大きく左右しかねない。とりわけ、株価が激しく動くのが、物言う株主と企業が対立するケースである。両者の一挙手一投足が思惑を呼び、株価を動かすのだ。
次ページでは、任天堂創業家の資産管理会社と海洋土木の東洋建設が激しく対立した事例を基に、企業と物言う株主の激しい応酬がいかに株価に影響を与えるかを解説する。