子育てをしていると、子どもの「ことば」の能力の発達が気になるもの。「子どものことばの発達」を専門とする言語聴覚士(げんごちょうかくし)の寺田奈々さんのもとには、日々、親御さんからのお悩み相談がよせられます。寺田さんがことばを引き出すレッスンを行うなかで、重要なアイテムのひとつとなるのが「絵本」です。じつは絵本には、子どもの「ことば」を引き出すポイントがいくつもあるのだとか。
今回は、ダイヤモンド社の新刊『ねこのおせわをしてください。』の発売を記念して、言語聴覚士の視点から寺田さんに本書をよみといてもらいました。
オノマトペは語彙力を身につけるステップ
オノマトペとは、音を表す擬音語、ようすを表す擬態語のことです。『ねこのおせわをしてください。』には、「ぐうぐう」「ごろごろ」「ぼさぼさ」のように、たくさんのオノマトペが登場します。
オノマトペはリズムの繰り返しの楽しさがあり、小さいお子さんにも親しみやすく、語彙力を身に付けるステップとしてお役立ちです。たとえば、「ぐうぐう」には「寝る」、ごろごろ」には「のどを鳴らす」のように、対応する動作語があります。「しぃーっ」は「静かに」、「そーっと」は「ていねいに」といった具合で、形容詞や副詞に置き換えられます。
お子さんは、かんたんな語彙(ごい)から難しい語彙へと少しずつレパートリーを広げていきます。この絵本では、お子さんにとってとっつきやすい表現であるオノマトペに、たくさん触れることができます。
カラフルではっきりした絵柄が、子どもの心をつかむ
低年齢のお子さんは、淡い色合いよりもどちらかといえば、はっきりしたカラフルな絵柄を好む傾向にあります。
今回取り上げる『ねこのおせわをしてください。』は、色がはっきりしており、お子さんにとって魅力的な絵本です。
0歳のわが子も、まだストーリーは分かりませんが、すぐに絵本を気に入り、にこにこしながら眺めています。ねこの表情が豊かで、ユーモアがあり楽しいです。
ほかにも、ちょっと変わった楽しみ方が
表紙と裏表紙をめくったところ、2ヵ所の中表紙に描かれている絵には、見比べてみるとあちこちに違いがあります。これを、間違い探しのように見比べてみると楽しいです。
「こっちはブラシに毛が付いてる!これを使ってねこの毛をとかしたのかな?」のようなやりとりを楽しみながら、お子さんのことばを引き出すのもおすすめです。
慶應義塾大学文学部卒
大学卒業後、2年過程の養成課程で言語聴覚士免許を取得。総合病院、耳鼻科クリニック、専門学校、区立障害者福祉センターなどに勤務。年間100症例以上のことばの相談・支援に携わる。臨床のかたわら、「おうち療育」を合言葉に「コトリドリル」シリーズを製作・販売。著書に『0~4歳 ことばをひきだす親子あそび』(小学館)『ことばを引き出す遊び53』(誠文堂新光社)『絵をみてまねっこ!いっしょにできたねおしゃべりカード』(合同出版)がある。専門は、お子さんのことばの発達全般・吃音・発音指導・読み書き学習面のサポート・大人の発音矯正。