賃上げの嘘!本当の給料と出世#9Photo:Bloomberg/gettyimages

野村證券は、ベースアップを入社3年目までの若手に限定した。ところが、実際には4年目以降の社員が“真の賃上げ”を享受している。背景には、事業モデル転換と並行して進めた人事戦略があり、中には前年からは考えられない超巨額のボーナスを手にする社員も。特集『賃上げの嘘!本当の給料と出世』の#9では、外資系金融社員ですらうらやむという今年の野村の賞与額と、それを可能にした評価テーブルの改定内容をお届けする。(ダイヤモンド編集部 永吉泰貴)

野村證券が賞与“大盤振る舞い”
高給の外資系金融社員も驚愕

「野村證券の社員の賞与額を知って驚愕した。いずれ自分の年収が追い抜かれるのではないかという危機感を持った」

 世界有数の外資系資産運用会社であるブラックロック・ジャパンに勤める社員は、今年の野村の賞与についてそう振り返った。

 証券業界は今、各社の業績が軒並み好調だ。2024年3月期決算では、みずほ証券の純利益が米国合算で前期比2倍以上、野村と大和証券グループ本社も大幅増益となった。少額投資非課税制度(NISA)の制度変更に日経平均株価の最高値更新と、活況な相場が業界全体を押し上げている。

 その追い風は社員の懐にも届いている。下表のように、証券大手5社のうち4社の賃上げ率が7%程度に達した。

 ところが、その中でただ1社、賃上げ率が3%程度にとどまっている企業がある。業界トップの野村だ。同社はベースアップの対象を入社3年目までに限定しているため、ほとんどの社員はベアの恩恵にあずかれていない。

 では、同社のベアは派手な初任給引き上げで世間の耳目を集めるためだけのものなのか。むしろその逆で、入社4年目以降の社員こそ年収が大幅にアップし、中には前年からは考えられない超巨額のボーナスを手にする社員もいるのが実情だ。

 次ページでは、野村の出世の仕組みと実際の待遇を公開する。人事戦略の一環として今年から変わった賞与の評価テーブルでは、誰が得をするのか。外資系金融社員ですらうらやむという、今年支給されたボーナスの実額と共にお届けしよう。