日本調剤で創業者息子が社長退任、親の役員復帰で透ける“浅はかな”新経営体制「プランAとB」Photo:PIXTA
*本記事は医薬経済ONLINEからの転載です。

 かつては一瞬とは言え3200円台を付けたこともあった株価が、このところ1300円台にまで落ち込んでいるとあっては、投資家からすればたまったものではなかろう。国内調剤薬局の第2位、日本調剤の株価低迷が続いている。

 3月11日に年初来高値となる1690円を付けた後はじりじりと値を下げ、24年3月期決算での減税損失計上と25年3月期の営業減益予想が市場に伝わった5月1日午前には、前日の終値から200円近く下落し、年初来安値となる1342円を刻んだ。時価総額に直せば20時間弱の間に、60億円強にのぼるカネが吹き飛んだことになる。

 この急落について市場では、調剤システムの更新費用の増加など、今期の業況への懸念が増したためと説明されている。しかし、実際の「主犯」はほかでもない。19年6月以来、代表取締役社長として同社を率いてきた三津原庸介氏の力不足にある。

 とうに随所で報じられている通り、日調を巡っては、4月30日に急遽開催された取締役会にて庸介氏本人から「健康上の理由」を口実とした退任の申し出があり、取締役会は、後任社長として笠井直人常務取締役を選任した。併せて、庸介取締役の実父で日調の創業者である三津原博前社長が、取締役として5年ぶりに復帰する人事を決定し、慌ただしく公表した。

 庸介氏の「健康上の理由」について、心の病に罹っているのではないかと、業界筋の間で囁かれている。肩書の数は豊富でも、親の七光りだけで6000人の従業員集団を率いていくのは荷が重かったのであろうか。真偽はともかくとして、6月25日付で取締役からも退くという。

 そもそもこの日調という会社。いわゆる“調剤バブル”の波を契機に、「門前薬局」の大量出店を通じて現在の地歩を短期間のうちに築いた。同業他社とは共同歩調を取らない一匹狼的な言動で、保険薬局業界をとかく賑わせてきたことでも広く知られる。