人口減少の影響は免れない

 とはいえ、国立社会保障・人口問題研究所は、2056年に人口が1億人を下回り、2059年には日本人の出生数が50万人を割るとの予測を2023年4月に公表している。急速な少子高齢化に伴う人口減少の影響から、菓子業界も免れないのは確かだ。

 またまたガムの話で恐縮だが(※)、ガム市場の縮小は人口動態の影響も大きい。「(過去にガムをよくかんでいた)団塊の世代が大量退職して人と会う機会が少なくなり、口臭対策への利用が減ったことも大きい」と、ある菓子メーカーのマーケティング担当者は分析する。

※編集部注:ガム市場の縮小については、同じく本書から抜粋した記事『グミブームの立役者はZ世代だけじゃない!?70代女性まで「ガム派から乗り換えた」と語るワケ』を参照。

 団塊の世代とは1947年から1949年にかけて生まれた戦後のベビーブーマーだ。2022年の年間出生数は80万人を割り込んだが、この3年間は毎年260万人を超えた。この世代は消費ブームをけん引し、新しい食べ物にも積極的にチャレンジしてきた。しかし、2024年には全員が75歳以上、つまり後期高齢者となる。72~75歳前後と言われる健康寿命を過ぎ、ほとんどの人が労働市場から「引退」している。さらに、彼ら・彼女らが、かつてに比べ食が細くなっていくのは確かだ。

 ガムは、戦後、欧米から新しい文化として入ってきて、団塊の世代とともに成長してきたとも言える。機能性の強化など、需要開拓に取り組んできたものの、主な愛好者たちのライフサイクルと軌を一にした感は否めない。

ベネフィットが世代間で受け継がれるグミ

 一方のグミはどうか。団塊の世代の子どもたち「団塊ジュニア」の幼少期の1980年代に登場し、団塊の世代には及ばないものの人口が分厚い層を取り込んだ。明治の「果汁グミ」の登場で市場が確立され、様々なメーカーが様々な新商品を投入。ジュニア達にとって思春期の「思い出の味」となっていった。ここまではガムの流れと同じだが、グミは親から子どもへと「おいしさ」などのベネフィット(商品から得られる価値、便益)がうまく伝わった点で、ガムと明暗を分けたのではないだろうか。

 それを説明する材料としては、前述の各種消費者調査のデータが象徴的だ。つまり、グミを食べているのは「年代では20~30代、ライフステージでは子育て中といった若い層で多い」というデータだ。親の世代が食べたグミを、子どもに買い与えたり、食べさせたりしている実態が浮かび上がる。

 実際、あるグミメーカーの担当者は「『果汁グミ』が強いのは、子どもが生まれて最初に食べるグミが『果汁グミ』というところ。調査でも、お母さんが最初に買い与えるグミが『果汁グミ』だというのが非常に多い。その子どもが大人になっても、そのまま『果汁グミ』を食べ続ける。つまりロイヤルユーザーになっていく流れがある」と話す。だから、『コーラアップ』や『果汁グミ』、『ピュレグミ』など、グミにはロングセラーが多いのもうなずける。

 もちろん、子どもたちもグミが大好きだ。小学館が発行する小学校低学年女児向け情報誌『ぷっちぐみ』と、少女まんが誌『ちゃお』が実施した「遠足・校外学習」に関するアンケート調査(2022年7月)によると、遠足に持って行きたいお菓子は『ぷっちぐみ』『ちゃお』読者ともに1位は「グミ」(50%、42%)だった。「ラムネ」や「じゃがりこ」「ハイチュウ」などを抑えた。