世代間の垣根がなくなる「消齢化」

 グミは幅広い層に支持されている。それに関連して興味深い視点がある。それは「消齢化」というキーワードだ。これは博報堂生活総合研究所が30年にわたるデータを基に打ち出したものだ。例えば、「ハンバーグが好き」「超能力を信じる」「夫婦はどんなことがあっても離婚しない方がよい」「木の床(フローリング)が好き」といった問いへの肯定否定の回答は、30年間で大幅に世代間の違いが縮小しているという。

 理由はいくつかある。(1)生活インフラの充実により生活者の「できる」が増えた、(2)社会から「すべき」が減り、皆がそれにとらわれずに暮らすようになった、(3)嗜好や関心の面で「年相応」から離れ出した生活者の「したい」が重なった――などが指摘される。

 甘いお菓子は、子どもや若い女性が食べるものといった「偏見」にも似たイメージは、完全に消え去っていることをグミ人気は証明している。

 また、コロナ禍では「家族の絆」が注目された。家族がそろって食卓を囲むことが増え、共通の話題を探した。Z世代は親世代とも仲が良く、例えば映画『シン・ウルトラマン』や『トップガン マーヴェリック』は親子で観に行くケースも多かった。親世代がノスタルジーを感じ、Z世代は新しさを感じるコンテンツは効率がよい。バラエティーに富むグミも、世代を超えた家族の話題づくりやコミュニケーションのきっかけに打ってつけの材料だった。

より広い世代を取り込むマーケティング

 マーケティングの世界では、ターゲットを絞り込むことが重要とされてきた。「誰に売るのか」が決まらなければ、商品の仕様や価格、流通戦略も決められない。しかし、人口減少社会の中で、特定の世代をターゲットにするだけでは、マスのヒットが生まれないというジレンマもある。だから、より広い層に受け入れられるような仕掛けで、一定のパイを確保することが、食品などの消費財のマーケティングで必要になっている。