百貨店の“失敗”に学ぶ

 商品のロングセラー化や小売業の持続可能な発展にとって、顧客を次世代につなげていく「承継」戦略がカギを握る。ガムはその承継につまずいた可能性がある。

 承継ができなかった典型が百貨店だ。バブル世代までは百貨店に一種の憧れがあった。子どもの頃、親や祖父母に連れて行ってもらうときは、一番良い服を着せてもらい、屋上の遊園地で遊び、帰りは大食堂でお子様ランチを食べた――そんな「良い」思い出があったからだ。

ガムはオワコン!?グミに敗北で「お口のお供」の序列逆転…その「たった1つの敗因」とはグミがわかればヒットの法則がわかる』(プレジデント社、税込1870円)
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 だが、バブル崩壊後の世代(団塊ジュニアも含む)は百貨店に対するそうした別格感は持っていない。親や祖父母に百貨店に連れて行ってもらった思い出はないし、郊外のショッピングモールの方が楽しかったり、おしゃれに目覚め始めた頃の憧れは、百貨店には入っていないビームスやユナイテッドアローズ(UA)だったりしたのではないか。

 いまの大学生に「百貨店に行きますか」と聞いても「行かない」との答えが返ってくる。「行くとすればどこの百貨店」と無理して尋ねると、駅ビルの「ルミネ」や「アトレ」だという答えがあがった。そもそも、百貨店という呼び名が死語になっているし、デパートといった呼び方も大学生にとってはダサく聞こえるのかもしれない。

 つまり、百貨店の世界観を企業側も伝えられなかったし、顧客である生活者が消費行動として百貨店に次世代を連れて行かなかった(経済的な理由から連れて行けなかった面もある)。デフレ不況も要因だが、1991年に10兆円に迫る規模だった百貨店市場が、今や半分の5兆円台になってしまった根本原因は「承継」戦略の失敗にある。

グミは「承継」に成功したカテゴリー

 その点、グミは「承継」に成功している商品カテゴリーだ。カンロでは、より明確に世代承継を意識した商品戦略をとる。主力の「ピュレグミ」はF1層(20~34歳女性)を狙った商品だが、子ども向けの「ピュレリング」と上質感のある「ピュレグミプレミアム」もラインアップする。「『ピュレグミ』は、立ち上げ当時食べていた方が、ちょうど親世代になってきている。そうすると、自分たちが食べていた『ピュレグミ』だから、安心感を感じてもらえている。『ピュレグミプレミアム』は濃厚なおいしさの『ピュレグミ』。F1層よりも上の層、プチ贅沢をしたい、ちょっとお金にも余裕がある大人の女性をターゲットにしたシリーズとして展開している」と言う。

 日本でのグミ登場時に子どもだった世代も、いまや40~50歳代で、食べ慣れた大人が増えた。生まれたときから親しんできた「グミネイティブ」も多い。JMR生活総合研究所の消費者調査では、ライフステージ別では「男性の既婚子なし」でも月1日以上食べる人が多い。このことから、グミの存在感は増しており、ガムの次世代への「承継」を危うくしている様子が透けて見える。