ディラン 当時、二刀流が可能だなんて思っていた球団は、そんなになかったと思う。

 僕は17年9月に、大谷を取材しに1週間くらい日本に行った。大谷の試合には10~20人くらいのメジャースカウトや関係者が見にきていて、彼らとは一緒に出かけたりよく話したりしたよ。面白いことに、その時、エンゼルスからは誰も来ていなかった。

 分かったのは、二刀流に前向きではない関係者もいたということ。打撃に関しては懐疑的な声が多かった。(高校時代と同じように)この時も、日本では投手としてよりも、打者としての方が優れていると思われていた。コントロールに難があったから。逆に、アメリカでは、投手として見られていた。100マイルの球は、どこに行っても100マイルだから。

 つまり、日米ともに二刀流に懐疑論はあったということ。それぞれに盲点があったということでもある。アメリカ側は、大谷の打者としてのスキルを過小評価していた。それに対して、日本側の関係者は、球速の効果を過小評価していた。100マイルの球があれば、たまにミスするくらいなら問題はないのに。日本人の考える理想のピッチングではないのかもしれないね。

 僕には大谷が投打の両方をやる姿が想像できたけど、実際にどういう形になるのかは分からなかった。スカウトの中にも、できると確信していた人はいた。16年くらいには、大谷が「世界一の野球選手」だと言う人すらいたよ。

サム 大谷も、それをすぐに証明したよね。18年の初めは、本当に高いレベルの投球をしていた。新人王に選ばれる活躍をして、投打の二刀流が可能だと証明したんだ。

エンゼルスを選ぶ大谷の性格を
高校時代の監督はわかっていた

 そもそも、メジャーで二刀流をやれるだけのポテンシャルがあると思っていなければ、あんなふうに全30球団が大谷獲得に熱心になるようなことはなかったはず。ただし、打者として50本近くホームランを打って、投手として160イニング以上投げられるとは、さすがに誰も想像していなかったとは思うけど。

トモヤ 大谷はいまだにエンゼルスを選んだ理由を明言していない。