ディラン 花巻東の佐々木(洋)監督にインタビューした時に、「大谷はドジャースかヤンキースに行きますよね?」と聞いたら、監督は、「そうは思いません。そんなにすごい伝統や日本人選手在籍の歴史もないチームに行くと思いますよ。彼は自分で歴史を作っていきたいと思っている」と答えたんだ。そしてこう付け加えた。「彼は全国のどの高校にも行けたはずなのに、誰もやったことのないことをやるために岩手にとどまった。そういう人間なんです」と。高校卒業時も、「アメリカに行くからドラフト指名しないでくれ」と日本の球団に言ったよね。高校から直接メジャーに行く選手なんていなかったのに。

 日本ハムは、誰もやったことのない二刀流に挑戦するチャンスを与えることで、日本に残るよう説得した。2017年にメジャー挑戦を発表した時も、日本球界の重鎮たちが、「アメリカでは二刀流は難しいだろう」と言っても、彼は気にしなかった。とにかく誰もやったことのないことをやりたいという気持ちが強いんだ。

サム 2021年に、エンゼルスは彼に課されていた制限を全て取り除いて、「君がやりたいようにやれ」と言った。もしかしたら、それが彼が再度、肘を痛めた理由なのかもしれない。体を酷使しすぎたり、投球量が多すぎたり。

 でも、大谷がそれで後悔しているということはないはず。過去を変えたいと思ってはいないと思う。エンゼルスでは、彼は監視されることなく自分の好きなようにトレーニングをすることができた。WBCでも好きなだけ投げて、好きなだけプレーすることが許された。

 これから大谷が、大きな怪我なんかをして、殿堂入りに求められるような成績を積み重ねられなかったとしても、選ばれるべきだと思うよ。もし、明日引退したとしても、殿堂入りする価値があるくらいの偉業をすでに成し遂げたと思う。

WBC決勝戦でも投げる大谷を
エンゼルスも止められなかった

トモヤ 23年のワールド・ベースボール・クラシックに話題を移そう。僕は久しぶりに野球であんなに熱狂した。特に決勝戦の最終場面で、大谷とマイク・トラウトが対戦した時は、「現実でこんなドラマチックなことが起こるのか」と興奮が最高潮に達したよ。

ディラン 最後のトラウトの打席は、永遠に歴史に刻まれる瞬間だと思うけど、メキシコ戦で劣勢に立たされていた時の打席が、僕は印象に残っている。