性が2つとは限らないとは、どういうことなのか?

 私たちの性には、どんなバリエーションがあるのか?

 それは、どんなふうに決まってくるのか?

 昨今明らかになってきた多様で柔軟な「性」の姿は、きっとあなたのもつこれまでの概念を覆すはずです。

 例えば「男性らしさ」VS「女性らしさ」。

 従来からあるこの固定観念は、今もなお、私たちの無意識に根付いています。

 ヒトの行動や思考を司(つかさ)どるのは脳です。脳の成長や機能には、遺伝子やホルモンが影響を与えます。そして、古典的な脳研究から、男女の脳には明確な違いがあり、それらがいわゆる「男性らしさ」「女性らしさ」を生み出していると考えられてきました。

 しかし、最新の科学研究から、脳には「性差」を上回る「個人差」が存在することが示唆されています。

 また、脳は成長過程で周囲の環境の影響を大きく受けること、脳は大人になってからも変化することなどが明らかになっており、社会的な性「ジェンダー」が脳の発達と関係があることもわかっています。

 近年、私たちを取り巻く社会は大きく変革し、結婚観やジェンダー観など、様々な価値観の多様化が進んでいます。

 古くから、男女の違いは人々の大きな関心ごとです。それゆえに、国内、国外を問わず、大変多くの性差にまつわる書籍が出版されています。しかし、それらを読んで強く思うことは「科学的根拠はあるのかな?」ということです。

 染色体や遺伝子、ホルモンなどの働きから、私たちに生物学的な性差があることは間違いありません。ですが、研究者としてこれらの働きや性差がつくり出されていく仕組みを知れば知るほど、「性」の実態は、多くの人がもっているであろう「男女」のイメージとは大きくかけ離れていきました。

 性差というのは、決して固定的なものではなく、多くのバリエーションをもち、時にはその差を上回る個体差(個性)もあるということ。「性」とは柔軟で多様なものなのです。