そのため、2019年時点でも、日本には相変わらず250以上のコングロマリットがあると推定される。JPX日経400の約25%(つまり、日本の優良企業100社)は依然として100以上の子会社を持っている。株式市場は多くの場合、いわゆる「コングロマリット・ディスカウント」(訳者注:多数の事業を抱える企業の価値が、各事業の価値の合計よりも低く評価される状態)の形でこうした企業に制裁を加えた。日本企業が競争するためには、戦略の再定義という、より根本的な行動が求められていたのだ。

失われた30年からの脱却を阻む
日本企業の大きな「課題」

 製造業で高度に多角化された大企業が漸進的イノベーションに注力するという昭和の仕組みがいまや通用しなくなっているのは明白である。というのも、すでに韓国や中国に模倣されているからだ。むしろ、日本の新たなイノベーション戦略では、明確に定義された技術リーダーシップの領域を対象とした投資をしなくてはならない。基礎研究の不確実性を受け入れ、計算されたリスクをとって特定の新技術で勝負に出るという、新しいマインドが求められているのだ。この変革と、それに取り組む企業の動きこそが、筆者が伝えたいメッセージである。

書影『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』『シン・日本の経営 悲観バイアスを排す』(日経BP 日本経済新聞出版)
ウリケ・シェーデ 著、渡部典子 訳

 今日、多くの日本企業がまだ伝統的な企業マインドに囚われているのは事実であり、さまざまな機会に目を向けていない。ややもすれば、古いパターンに回帰することで脅威に反応し、どうにかして過去の成功をよみがえらせようと期待しているのだ。ある意味で、日本の過去の成功体験こそが変化を阻む最大の障壁であり、過去30年にわたって日本の根本的な課題となってきた。

 しかし、日本企業が今直面している問題を見れば、時間とともに、少なくとも一部の伝統的企業では、改革や刷新が行われることが予想される。というのは、改革できない言い訳がなくなっているだけでなく、改革しなければ人材、株主、技術、利益をめぐる競争で明らかに負けてしまうからだ。