衰退したアメリカが
再び回復したワケ

 だが、現在もなお世界の基軸通貨がドルであるのだから、あえてヘゲモニー国家はどこかと尋ねられたなら、アメリカと答えるほかない。各国はドルを必要とするため、アメリカは巨額の貿易赤字でも存続できるのだ。これは、アメリカの決定的な強みである。

 アメリカの経済力は衰えたけれども、それがある程度回復することになった。それは、インターネットが普及したからである。

 インターネットの技術は、もともとアメリカ産である。リンドン・ジョンソンの大統領時代(1963~1969)に、ARPANETというパケット通信ネットワークを運用したことからはじまった。

 ARPANETはやがて、インターネットへと発展していった。したがって、多くの人々が知っているように、インターネットとは軍事用の技術であった。1980年代になるとLAN(local area network)が広がり、PCとワークステーションが発達した。

 元来が軍事用であったインターネットが民生用に利用された背景には、1991年の社会主義崩壊があった。仮想敵国であるソ連がなくなったのだから、アメリカはインターネットの技術を、軍事用に独占する必要はなくなったのである。

 アメリカがインターネットを一般に開放すると、たちまちのうちに他国にも使われるようになった。

 だとしても、アメリカはインターネットの最新国だといってよい。たとえば、ウェブサイトはアメリカの独占物でないとはいえ、アメリカのものが非常に多い。またGAFAMは、すべてアメリカ企業である。

 このようにインターネットが普及すると、あっという間に世界中で英語の使用頻度は増えた。現在、世界で使われる文章の90%が英語で書かれているといわれている。アメリカは、インターネットの独占はできなかったかもしれないが、世界でもっとも多く使用される言語として、英語の地位を大きく高めたのである。アメリカの経済力は、リバイバルすることになった。

 アメリカ経済は、ICTの活用によってふたたび活況を呈した。2000年1月に、アメリカ経済は、107カ月の持続的経済成長を達成した。それは1860年代以来最長の記録であった。その立役者となったのが、e-コマースとインターネットであった。それはヨーロッパ、とくにイギリスに影響した。アナリストたちは、アメリカでは科学技術の革新が生産性をうなぎ上りに上昇させ、S字形の曲線の上昇局面を経験していると信じていたのである。