インターネットが増幅させた
リーマンショックのインパクト

 インターネットのマイナス面をいうなら、世の中があまりに強く結び付けられたことであろう。2008年のリーマンショックは、インターネットによって増幅されたのである。

 その前年の2007年、アメリカでサブプライム住宅ローン危機が発生した。これは低所得層の住宅購入用のために、ローン返済が滞った場合への担保として購入する住宅に抵当権を設定し、抵当貸付とした住宅ローンである。

 サブプライムローンへの投資を証券化した金融商品として、サブプライム・モーゲージ(抵当)がつくられた。このサブプライム・モーゲージの価格が金融市場で下落することになり、アメリカ金融界は大きな苦境を迎えることになった。

 2008年には、アメリカの巨大な投資銀行であったリーマン・ブラザーズが巨額の負債を抱えて倒産し、この事件の影響は世界中におよび、世界経済は大きく失速した。この事件は、リーマンショックと呼ばれる。

 リーマン・ブラザーズは、サブプライム住宅ローンに関して、インターネットでは肯定的な反応ばかりを多数受け取っており、それを信じたのである。不都合な情報は、インターネットには流されてはいなかった。

 リーマンショックは、1929年の大恐慌ほどの不況ではなかったが、そのインパクトははるか速く世界中を駆けめぐった。それが、インターネットの発展の影響であった。

 さらに、ギリシアの巨額の財政赤字が明らかになった2009年には、その影響がポルトガル、アイルランド、イタリア、スペインなどにも飛び火した。ギリシアのGDPは、EU全体の2%にも満たないが、同じような財政問題を抱える国の信頼も疑われることになった。

 EUは結局、ギリシアへの資金援助を決定する。IMFと合わせて最大7500億ユーロ規模の金融支援の基金(「欧州安定化メカニズム=ESM」)の創設などの包括的な金融危機対策に合意した。

 元来EUは、一国が経済危機に陥った場合、他の国々が助けられるという前提のもとに創設された。だが現実は、一国の経済危機が他国に飛び火するのである。

 これは世界のグローバル化と似た現象である。たしかに現在でも保護関税や労働力の移動への障壁は大きい。だが、世界が徐々に単一市場へと向かっているように思われる。そのときに生じるリスクは、規模が非常に大きな市場だけに、きわめて大きい。