受験失敗のショックは
もりだくさんの行事で払拭

 中学1年の授業カリキュラムでは、全学科を通して「時間を割いて基礎学力を充実させる」ということに力点を置きました。この段階で基礎学力を定着させるか、させないかで、高校3年間の勉強の進度と深度が変わってきます。

 また、中学時代には知的好奇心をくすぐるような行事を増やしていきました。学問に対して興味を湧かせることや、自分でも気づかなかった自身の個性、適性を発見してもらうことがおもな目的です。

 でも、実はこうした目的は、成果が出たあとで分かったことです。中学校開校当初は、「まず、走ってみる。走りながら取捨選択して、子どもの実践を通して理論を考える」というのが私以下、当時の教員たちのやり方でした。こうした決断の速さやフットワークのよさは、令和の時代を迎えた今も西大和学園の教員たちに引き継がれています。

 中学に入学したての6期生が、まず参加する行事が4月の「オリエンテーション合宿」です。奈良県宇陀郡曽爾村にある国立曽爾青少年自然の家にひと晩泊まって、クラスメートや先生たちの輪に溶け込みます。

 8月には奈良県南部の霊峰・大峰山へ、3泊4日の登山。明けて3月には長野県志賀高原へ5泊6日のスキー合宿。その間にも小豆島での理科実験合宿、高校生と合同の文化祭や体育祭など、大忙しです。

 特に宿泊行事を多くしたのは、6年後の大学受験に向けてじっくり絆をつくり、団結力を高めていく意味もあります。でも、行事に取り組む子どもたちを観察していると、ほかにもたくさんの効果があることが分かりました。

 ひとつは、中学入試でのわだかまりをリセットできるということです。

 西大和学園中学校へ入学してきた生徒のなかには、目指していた難関私立中学の受験に失敗した子もいます。

「もう一度試験をすれば合格者の3分の1は入れ替わる」とも言われる中学入試。高校入試と比べても運・不運に左右されることが多いので、一度の失敗を長く引きずる子がたくさんいます。でも、あちらへこちらへと次々に合宿していると、それぞれの環境に慣れようと必死になって、いつの間にか鬱々とした気持ちがリセットされるのです。