【気づいたらゴミ屋敷】物が捨てられない病気「ためこみ症」とは、いったい何でしょう?
そう語るのは、これまでネット上で若者を中心に1万人以上の悩みを解決してきた精神科医・いっちー氏だ。「モヤモヤがなくなった」「イライラの対処法がわかった」など、感情のコントロール方法をまとめた『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』では、どうすればめんどくさい自分を変えられるかを詳しく説明している。この記事では、本書より一部を抜粋・編集し、考え方次第でラクになれる方法を解説する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)
気づいたら「ゴミ屋敷」?
「ゴミ屋敷」という言葉を聞いたことがありますよね。
思い出のある物はなかなか捨てられないものですが、異常に物を溜め込んでしまう結果、「ゴミ屋敷」と呼ばれてしまうことがあります。
もちろん、ゴミ屋敷が必ずしも病気が原因というわけではありませんが、ゴミ屋敷のイメージを持つことで、「ためこみ症」について少し理解しやすくなるかもしれません。
ためこみ症には「自分が病気だと思えない」という怖い特徴があります。
そのため「自分は病気じゃないから大丈夫」と思っていても、実はためこみ症のせいで自分も周りも困っていることがあります。
この記事では、そんな厄介な「ためこみ症」について詳しくお話しします。
「ためこみ症」って何?
ためこみ症には以下のような特徴があります。
1. 必要のない物や価値のない物を大量に集める
他人が共感できない物や、普通の人が「これは要らないかな」と思う物でも集めてしまい、捨てることができなくなります。
2. 集めた物で生活環境が散らかる
物が部屋中にあふれてしまい、歩くのも大変だったり、普通に生活するのが難しくなったりします。
3. 集めた物に強い価値や愛着を持ち、捨てることに苦痛を感じる
捨てることに対して強い罪悪感や怒りを感じるため、物を手放せません。これがきっかけで周囲とトラブルになることもあります。
ためこみ症は「物を捨てられない」ことで生活に支障が出たり、周りとトラブルになったりする場合に考えられます。
さらに、多くの患者さんは自分の行動が問題だと思っていないことが多く、それが治療の妨げになります。
衝動買いや収集癖との違いは?
「好きなもので家が溢れている自分もためこみ症なんじゃないか?」と感じることもあるかもしれませんが、ためこみ症は「物を捨てられない」という特徴が強く、躁病や衝動買いとは異なります。
ためこみ症の場合、物を集める理由は「いつか役立つかも」「思い出があるから」などが多く、整理整頓したり所有することへの喜びはあまり見られません。
捨てることへの過剰な反応が特徴なのです。
でも、自分にかぎってそんなはずはないとはならない理由
ためこみ症は一般人口の「約2~5%」に見られ、約30人に1人と、決して珍しいものではありません。
特に単身者や対人恐怖症、引きこもりの人でよく見られます。
さらに、ためこみ症は一人での治療が難しく、患者さんが自分の行動を問題と認識していなかったり、治療に積極的でないことが多いため、悪化しやすいのです。
そんな「ためこみ症」は進行すると、物に潰されたり、転倒したり、引火して火事の原因になったりすることもあります。
もし自分や周りに困っている人がいるなら、まずは問題意識や治療の可能性を知ることが大切ですので、こちらの記事を勧めてみてください。
(本稿は、『頭んなか「メンヘラなとき」があります。』の著者・精神科医いっちー氏が特別に書き下ろしたものです。)
精神科医いっちー
本名:一林大基(いちばやし・たいき)
世界初のバーチャル精神科医として活動する精神科医
1987年生まれ。昭和大学附属烏山病院精神科救急病棟にて勤務、論文を多数執筆する。SNSで情報発信をおこないながら「質問箱」にて1万件を超える質問に答え、総フォロワー数は6万人を超える。「少し病んでいるけれど誰にも相談できない」という悩みをメインに、特にSNSをよく利用する多感な時期の10~20代の若者への情報発信と支援をおこなうことで、多くの反響を得ている。「AERA」への取材に協力やNHKの番組出演などもある。