動画でコピーロボットを作れないか

 その動画はさしずめ、『ドラえもん』や『パーマン』に出てくるコピーロボットだ。ロボットの鼻を押した人そっくりに変身し、その人と同じようにしゃべり、行動する(動画の場合は鼻の代わりに機器の再生スイッチを押すことになる)。「エビの殻むき達人のコピーロボット」というわけだ。

 おばちゃんたちも、自分の技が撮影されて動画になり、高校生のお手本になると言われれば悪い気はしないはずだ。しないどころか、エビの殻むきをもっと速く行うにはどうしたらいいかを、研究しはじめるのではないだろうか。

 この仕組みが実現すれば、アルバイトの高校生でも、1尾当たり1分かかっていた殻むきが20秒でできるようになる。出勤日が異なるアルバイトにももちろん動画を見せてまねしてもらう。

 そうやって「できる」を増やしていけば、本人も作業が楽しくなるはずだ。それだけではない。ちりも積もればで、低いと言われる日本のサービス業の生産性が上がる。そうすれば働く人たちの時給もアップする。エビの殻むきだってもっと報われる仕事になるのだ。

 これが、私が動画に着目する契機となった原体験だ。このエピソードから「動画活用によるサービス業の生産性向上」という、その後、生涯を賭して取り組むこととなる問題意識の一端をご理解いただけるのではないだろうか。

 しかし、のちに動画を使うだけでは実はうまくいかないことがわかった。カギとなるのは、私の著書『暗黙知が伝わる 動画経営』の監修者である野中郁次郎教授の提唱した、知識創造理論を持ち込むことだった。

*この記事は、『暗黙知が伝わる 動画経営――生産性を飛躍させるマネジメント・バイ・ムービー』(ダイヤモンド社刊)を再編集したものです。