日本銀行から資金循環統計が発表された。家計金融資産に占める株式の比率は過去最高となった。筆者試算の外貨比率も過去最高だ。家計はリスク性資産、外貨建て資産への投資に目覚めたようだ。ただ、このままの傾向が続くことによる悪影響について考え始めた方がいいだろう。(みずほ銀行チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌大輔)
急増する家計の株式と
外貨の保有残高
円安地合いが長引く中、新NISA開始に伴う「家計の円売り」をその一因として挙げる声は多い。この点、6月27日に日本銀行より2024年3月末時点の資金循環統計が公表され、小さくない注目を集めている。
まだ断言できる段階にはないものの、その結果を見る限り、日本の家計部門の投資行動に関して「いよいよ動き出した」という印象は抱かれる。政府・与党の推し進める資産運用立国との関連で注目される家計の金融資産残高は前年同期比7.1%増の2199兆円で、6四半期連続で過去最高を更新しているが、そのドライバーとなったのはやはりリスク性資産であった。
具体的には投資信託が同31.5%増の119兆円、株式・出資金が同33.7%増の313兆円と著しい伸びを見せている。新たな少額投資非課税制度(以下、新NISA)は確実に効果を上げているという評価になるだろう。
しかし、今の日本では新NISAの効果よりも副作用に注目が集まっている。確かに、上述のような動きを受けて株式・出資金の構成比率は14.2%と統計開始以来の最高水準を更新している。これ自体は紛れもなく前向きな効果といえるだろう。
次ページ以降、家計金融資産の中身を分析し、為替相場への影響を検証する。