しかしこれだけでは、自分の価値観に合う店かどうかを判断するのに充分とはいえません。そこでライブキッチンなのです。

串打3年、捌き8年、焼きは一生」というように職人の技は嘘をつきません。鮮やかな捌き方、丁寧な串打ち、見とれてしまう焼きをするうなぎ屋は、自分の口に合わない可能性はあるものの、ほぼ間違いなく美味いのです。

 川豊(千葉県成田市)と駿河屋(同市)は、成田山参道でひと際人だかりができている店です。この店では参道からうなぎを捌く様子が見られます。職人技が多くの人にワクワク感を与える証拠です。

 うなぎ田代(愛知県瀬戸市)店頭から捌き、串打ち、焼きと豪快な姿が見られることから人気です。うなぎ量深(茨城県笠間市)は、店頭で焼く様子を動画投稿したところたちまち人気店になりました。

 座ってゆっくりライブキッチンを楽しみたい方にはうなぎ屋酒坊・画荘 越後屋(埼玉県所沢市)うなぎ時任(東京都港区麻布十番)う奈ぎ道場(千葉県松戸市)のカウンター席を予約することをお勧めします。この3店は、店主との話を楽しみながら調理の一部始終が見られます。うなぎの知識が深まり、見て感動、食べて口福と三拍子揃った醍醐味はうなぎ好きにはたまりません。

 このことをわかった上で、新規出店する店の中には、店舗設計にライブキッチンを入れているところも出てきています。

 私の息子は、現在老舗うなぎ店で独立を夢見て職人の修業をしています。きっかけは、転職を考えている時に見たうなぎを捌く職人の姿が「かっけえ」と感じたから、と言っています。ライブキッチンを見て職人の姿に憧れ、うなぎ文化の担い手になってくれる若者が出てくれたらこんなにうれしいことはありません。