セクハラ老害を生みだす多岐にわたる原因
セクハラをする理由、というより、相手にセクハラととられてしまう理由のひとつに、聴力の衰えが挙げられます。
高齢者は、相手の言葉がうまく聞こえなかったとき、その後のコミュニケーションを円滑にするために、「聞こえたふり」をすることが多いです。
ふりをする以前に、相手の発した言葉の存在に、まったく気づいていないこともあるでしょう。
例えば、入院中の介助の場面で看護師さんが「服を脱がしますね」と本人に伝えているのに、それが聞こえていないということがあります。
そして、看護師さんが服を脱がし始めると、「なんだよ、いきなり脱がせて裸にしやがって。エロいことでも考えてんのか?」になるわけです。こういったコミュニケーションの齟齬(そご)が、セクハラを生むケースがあります。
また、コンビニオーナーのMさんのように、セクハラをする高齢者には、相手の表情や感情を読むのが苦手であることに加え、距離感の見積もりが甘い、という共通点もあります。
高齢者は相手が嫌がっている、うれしいというのを読むのが若い人よりも不得意なので、言葉どおりにとらえたり、勘違いをしたりしてしまうことがよくあるのです(※1)。
適切な距離感がわかっていない高齢者も多く、いわゆる相手の「パーソナルスペース」にずけずけと踏み込んでしまっても、それに気づきません。
医療の現場では、高齢の男性患者さんにお尻を触られる、という女性看護師さんが後を絶ちません。これは、やさしい言葉をかけてくれたり、身の回りのことを世話してくれたりする看護師さんを、「いい関係にある人」「近い距離感にある人」と勝手に思い込むために起こります。
「仲がいいんだから、それくらい問題ないだろう」
とんでもありません。問題、大アリです。看護師さんは、仕事でやっているから物理的な距離が近くなるだけであり、心理的な距離まで近くなっているわけではないですからね。
そして、奥さんや旦那さんなど、配偶者に先立たれてしまった単身の高齢者も、
他人との距離感が不安定になりがちです。配偶者と死別したことにより「孤独」が生まれ、社会から必要とされているという感覚が薄くなります(※2)。
それにともない、自分に親しくしてくれる人の希少性が増し、価値が大きくなり、依存性が高まり、結果的に近い距離感を求めるようになるのです。気持ちはわかりますが、あくまでそれは一方的な感覚といわざるを得ないでしょう。