どんなレストランが注目か

 現在のイギリスは、わざわざ旅をするに値するレストランが何軒もあります。コロナ禍で海外渡航が難しかったときも、比較的行きやすかったので、2020~2021年と連続で2週間ずつくらい食べに行ったんですが、極めて充実した旅になりました。

 今やロンドンには、ミシュランで星を獲得したり世界のベストレストラン50にランクインしたりする店が数多くあります。その多くは、現代的イギリス料理の店ですが、昔の世代のレストランより格段とレベルが上がりました。

 また、インド料理でも、昔は特に料理にこだわりのないカジュアルな店くらいしかなかったのが、洗練された現代的インド料理が生まれたり、本場さながらの郷土料理の店が増えたりするなど、充実が見られます。

 そして、特筆すべきが、地方のレストランです。イギリスのレストランのレベルが上がる中で認識するようになったのですが、もともとイギリスは食材には恵まれていました。

 肉だと、仔羊や鴨、鳩、そしてジビエの雷鳥。魚介だと、アカザエビやドーバーソール(舌平目)。

 もともと食材は良かったのに調理が悪くてそれに気付けなかったのか、それとも生産技術や流通の向上でおいしくなったのかは不明ですが、いずれにしても、今現在は、どれも世界に誇れる食材です。これらを産地の近くで楽しめるのが、地方のレストランなのです。

イギリスは美食国といえる?

 イギリスは、現時点では、そこら辺のお店にふらっと入っても美味しい、という状況にはありません。特定のレストランとシェフたちが頑張っているという段階で、一般のお店に関してはまだまだ厳しいというのが正直なところです。

 ただ、住むのでなければそういうお店にわざわざ行くこともないでしょうから、ちゃんとお店を選び、事前に予約をして訪れれば、昔のようにイギリスでまずいものに遭遇するということはありません。日本からわざわざ食目的でイギリスに行く人は少ないかもしれませんが、その価値はある、と断言できます。

(本稿は書籍『美食の教養 世界一の美食家が知っていること』より一部を抜粋・編集したものです)

浜田岳文(はまだ・たけふみ)
1974年兵庫県宝塚市生まれ。米国・イェール大学卒業(政治学専攻)。大学在学中、学生寮のまずい食事から逃れるため、ニューヨークを中心に食べ歩きを開始。卒業後、本格的に美食を追求するためフランス・パリに留学。南極から北朝鮮まで、世界約127カ国・地域を踏破。一年の5ヵ月を海外、3ヵ月を東京、4ヵ月を地方で食べ歩く。2017年度「世界のベストレストラン50」全50軒を踏破。「OAD世界のトップレストラン(OAD Top Restaurants)」のレビュアーランキングでは2018年度から6年連続第1位にランクイン。国内のみならず、世界のさまざまなジャンルのトップシェフと交流を持ち、インターネットや雑誌など国内外のメディアで食や旅に関する情報を発信中。株式会社アクセス・オール・エリアの代表としては、エンターテインメントや食の領域で数社のアドバイザーを務めつつ、食関連スタートアップへの出資も行っている。