変化が激しく先行き不透明の時代には、私たち一人ひとりの働き方にもバージョンアップが求められる。必要なのは、答えのない時代に素早く成果を出す仕事のやり方。それがアジャイル仕事術である。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)は、経営共創基盤グループ会長 冨山和彦氏、『地頭力を鍛える』著者 細谷 功氏の2人がW推薦する注目の書。著者は、経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)でIGPIシンガポール取締役CEOを務める坂田幸樹氏。業界という壁がこわれ、ルーチン業務が減り、プロジェクト単位の仕事が圧倒的に増えていくこれからの時代。組織に依存するのではなく、私たち一人ひとりが自立(自律)した真のプロフェッショナルになることが求められる。本連載の特別編として書下ろしの記事をお届けする。
経験不足の部下には仕事を任せられない?
職場でしばしば耳にする「君にはまだ経験が足りない」といった類の言葉は、多くの若手社員にとって大きな挫折感をもたらします。このような発言をする上司は、自分の経験や知識が絶対的なものであると信じており、新しいアイデアやアプローチに対して閉鎖的です。
しかし、現代のビジネス環境は急速に変化しており、過去の成功体験だけでは通用しないことが増えています。デジタル技術の進化や市場のグローバル化に伴い、新しいスキルや視点が必要とされる時代です。そうした中で、若手社員の意見やアイデアを軽視することは、組織全体の成長を妨げる原因となります。
なぜなら、若手こそが最新の技術やトレンドに敏感であり、新しい視点を提供できるからです。「君にはまだ経験が足りない」と言われた若手は、自分の意見が尊重されないと感じ、モチベーションを失います。結果として、優秀な人材が他社に流出するリスクも高まります。
上司の経験こそが、最高の教育材料?
「私のやり方に従え」という言葉も、時代遅れの上司にありがちな口ぐせです。このような指示は、一見すると効率的に思えるかもしれませんが、実際には部下の創造性を奪い、自主性を抑え込む結果となります。特に現代のビジネス環境では、柔軟性と適応力が求められており、固定化された方法論に固執することは危険です。
たとえば、顧客とのコミュニケーション方法一つとっても、従来の「飲みニケーション」のための対面での会食から、EメールやSNSを活用した迅速な情報共有へと移行しています。
また、技術の進歩に伴い、新しいツールやソフトウェアが次々と登場し、それらを活用することで業務の効率化が図れます。従来通りに自社の研究開発部門と連携して新たな技術の開発を試みるよりも、生成AIに世界中のスタートアップや特許情報を調べてもらって、他社と連携した方が早いかもしれません。
このように、上司が「私のやり方」に固執することで、こうした新しい技術や方法を取り入れる機会を逃してしまうことは、組織全体の競争力低下に直結します。
若者ならではの強みがイノベーションを生む
経験不足を理由に若手を排除することは、長期的に見て大きな損失です。
組織が成長し続けるためには、若手の意見を積極的に取り入れ、彼らが自分の能力を最大限に発揮できる環境を整えることが重要です。自分で考え、試行錯誤する余地を与えることで、彼らの成長を促し、組織全体のイノベーションを推進することが可能となります。
現代のビジネス環境で求められるのは、過去の成功体験や固定観念に固執するのではなく、新しい挑戦を恐れず、柔軟に対応できる姿勢です。そしてそれを最大限実現できるのが「若者、よそ者、馬鹿者」なのです。
『アジャイル仕事術』では、変化に迅速に対応し、柔軟に業務を進めるための方法をたくさん紹介しています。
株式会社経営共創基盤(IGPI)共同経営者(パートナー)、IGPIシンガポール取締役CEO
早稲田大学政治経済学部卒、IEビジネススクール経営学修士(MBA)
大学卒業後、キャップジェミニ・アーンスト&ヤングに入社。その後、日本コカ・コーラ、リヴァンプなどを経て、経営共創基盤(IGPI)に入社。現在はシンガポールを拠点として日本企業や現地企業、政府機関向けのプロジェクトに従事。細谷功氏との共著書に『構想力が劇的に高まる アーキテクト思考』(ダイヤモンド社)がある。『超速で成果を出す アジャイル仕事術』(ダイヤモンド社)が初の単著。