英国で14年ぶりの政権交代
増田 英国、フランスで行われた解散総選挙の結果を受け、世界に激震が走っています。まず7月4日に行われた英国総選挙では、与党の保守党が惨敗し、14年ぶりに労働党への政権交代が起きています。5日にはスターマー党首が首相に就任しました。
池上 労働党は206議席から412議席と倍増。保守党は345議席から121議席と半分以下に。現役閣僚も次々に落選し、スナク氏は議席を守ったものの首相を辞任、責任を取るとして保守党党首も退くことになりました。
増田 保守党への不満は、ブレグジット(英国の欧州連合〈EU〉離脱)によって生じている問題に端を発しています。2016年に離脱の賛否を問う国民投票が行われ、完全離脱から3年たった現在、世論調査では「EUへの復帰」を求める声が半数を上回るようになりました。離脱を後悔しているという人も、同様に過半数に達しています。
一方で、欧州懐疑主義で右派のポピュリスト政党といわれるリフォームUKは議席を伸ばしました。16年当時、EU離脱を主導したファラージ氏が率いる政党で、移民の流入制限や大減税を掲げています。ファラージ氏も今回の選挙で議席を獲得しました。投票日前日にファラージ氏にインタビューしましたが、彼の選挙区はブロークン・ブリテンと呼ばれる寂れた地域。中学生の支持者もいて、驚きました。
池上 ファラージ氏は当時、まさか本当にEU離脱が実現するとは思わずに離脱をあおっていて、実際に離脱となった際には「自分の生活を取り戻す」と党首の座から逃げ出した無責任な政治家です。
EU離脱で英国にはさまざまな問題が起きています。経済面でいえばEU離脱後も貿易協定によって関税はゼロのままですが、EU加盟時には免除されていた輸出入時の煩雑な手続きが必要になり、時間と手間がかかるようになりました。
例えば英国は土壌が悪いためフランスから新鮮な野菜を輸入していました。ところがEU離脱後、フランスの農家は手続きの煩雑さから英国への輸出を嫌うようになり、英国には新鮮な野菜が入ってこない状況になっているのです。
増田 英国では賃金も上昇していますが、インフレ率の上昇に追い付いていません。