日本株が7月以降、乱高下した理由を考えると、米国発の要因が大きかった。一方で、日本株の底堅さを感じさせる側面もあった。それぞれの要因を振り返りながら、今年下期以降の日本株の投資戦略を展望する。(UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント ジャパン・エクイティ ストラテジスト 小林千紗)
海外投資家が日本株を有望視
「二大構造変化」に期待大
日経平均株価が史上初めて4万2000円台に乗せるなど、7月上旬にかけて日本株が上げ相場となった背景には、二つの要因があった。
一つは、米大統領選挙に向けた6月末のテレビ討論会後、トランプ氏の勝利が意識されたことによる選挙の前倒しラリー(トランプ氏の掲げる政策が景気刺激的であるとの見方が後押し)が起きたこと。もう一つは、6月の米国CPI(消費者物価指数)の下振れを受けてFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げが意識され、リスクオン(リスク資産を選好する動き)が発生したことだ。
その結果、前者に起因する形で金融株が上昇したほか、後者を受けてグロース株、特にテクノロジー株や中小型株に追い風が吹いた。中でも日経平均株価の上昇率は、世界株や米国株を上回った(下図参照)。日本株は今年1~3月の好パフォーマンスのあと、4~6月は材料出尽くしで他市場をアンダーパフォームしていたため、その揺り戻しが上げ幅を増幅させたとみられる。
ただ、11月5日の米大統領選挙や、実際の利下げ開始までには時間があること、ファンダメンタルズに変化がない中での期待値先行的な株高であったため、米中貿易紛争激化への懸念を受けて株価は下落。結果として、日本株の株価は6月末の水準へと調整した。
とはいえ、グローバルな主要株価指数に対して、日本株が再び高値を更新するまでのキャッチアップの仕方を見ると、日本株もいったん株価がアンダーパフォームした後は、再び買い戻される市場になったことを意識させた。つまり、日本の構造的な変化への期待は大きく、日本を中長期的な投資先として見始めた海外投資家が増えていることの証左といえよう。
日本の構造的な「二大変化」とは何か。なぜ、海外投資家は日本市場を有望視しているのか。次ページ以降では、来年にかけて日本株の追い風となる投資テーマや相場環境を展望しながら、24年下期に日本株の中で特に期待できる具体的な「五つの投資先」を明らかにする。