ドル相場との連動性薄れた原油相場、6月底値から反発はどこまであるのかPhoto:PIXTA

ウクライナや中東情勢など地政学リスクの高まりもあり、6月上旬に底を付けた原油相場は上昇に転じたが、上値が重い展開が続いている。ドル相場との連動性も薄れ、相場を方向付ける要因が乏しいのが現状である。(三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主任研究員 芥田知至)

中東情勢の緊迫化見通しで
4月中旬に半年ぶりの高値

 原油相場は、6月上旬をボトムに上昇に転じたが、上値は重い。今後も一進一退の動きが続きそうだ。高値を付けた4月半ば以降の原油相場を振り返る。

 3月半ば以降、米中の景気指標は底堅さを示すものが多い一方、地政学リスク要因は悪化した。そのため、原油は上値を試す展開となっていた。

 4月12日には、この日にもイランが4月初めに起きたシリアのイラン大使館空爆に対する報復をイスラエルに対して行うと報道され原油価格は上値を追った。米国産のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)で1バレル当たり87.67ドル、欧州北海産のブレントで92.18ドルと昨年10月下旬以来の高値を付けた。

 週明けの4月15日は、14日未明にかけて、イランがイスラエル領内に報復攻撃を行ったものの、被害は最小限にとどまったことや、イランが作戦を終えたと表明し、事態の幕引きを図ったことを受けて、中東の原油供給に影響が出るとの懸念が後退し、原油は下落した。

 17日はWTIが3.1%安、ブレントが3.0%安と下落幅が拡大した。前日のパウエルFRB(米連邦準備制度理事会)議長による「インフレ鈍化の確信を得るには想定以上に時間がかかる可能性」に言及したタカ派的発言を受けて、利下げ開始の後ずれで米国の景気や石油需要が鈍化するとの懸念が強まった。

 23日は、イスラエルによるガザ地区南部ラファへの本格侵攻が警戒されたことや、ドル安が買い材料となった。

 次ページ以降、6月の底値を付けるに至った要因を検証しつつ、今後の先行きを予測する。