人材配置では性格ではなく
能力の評価が重要

 性格診断はときに、組織の人材配置(採用や配置転換)にも利用されることがあります。しかし、このような利用には注意が必要です。MBTIやストレングスファインダー、トゥルーカラーズなどの性格検査・診断ツールの提供者側は、人材配置への利用を推奨していません。例えば、MBTIを人材配置に用いることは公式には認められていません。MBTIの主な目的は、自己認識の向上、コミュニケーションの改善、チームワークの強化とされています。

 これらのツールは、個人の性格特性を理解するためのものであり、職務適性を評価するためのものではありません。職務におけるパフォーマンスや適性は、性格以外にも多くの要因に依存します。例えば、特定のスキルや経験、職場の文化やチームのダイナミクスなどです。

 性格診断ツールを用いて他者にラベルを貼ることによって、その人の多面的な能力や可能性を見落とすリスクが生じます。固定されたラベルに基づいて判断を下すことで、個人の成長や変化を阻害するかもしれません。心理学の研究でも、性格やパーソナリティ特性は、年齢やライフイベント、社会的役割の変化によって変わることが示されています。したがって、性格診断を採用や配置転換の唯一の基準とするのは適切ではありません。

 性格診断は自己理解を深めるための非常に有益なツールであり、個人が自分の強みや課題を認識し、より効果的に働くための手助けとなることは間違いありません。しかし、その利用はあくまで個人の成長やチームのコミュニケーション改善を目的とすべきであり、人材配置のために使用することには慎重であるべきです。

 人材配置に使う物差しは、人が変化しうることを前提にしたものがよいでしょう。性格診断に頼るのではなく、ある役割が遂行できるかどうかで判断する方が適切です。人は経験や環境の変化に応じて成長し、適応します。固定的な性格ラベルではなく、役割遂行に必要な能力を持つ人材を評価することが、変化に対応しながら組織を成功に導くためには重要です。

 役割の遂行能力とは、具体的には特定の業務に必要な知識や技術を持ち、それを実践できるスキルがあること。そして、挑戦を恐れず、新しい状況に適応し、継続的に学び成長するマインドセットも不可欠です。こうした要素を総合的に評価することで、組織はより適切な人材配置を実現し、持続的な成長と成功を支えることができるでしょう。