莫大な軍事費を使う膨張・中国を
抑止するためのヒト・モノ・カネ

 政府は剰余金を使った防衛財源を年間7000億円程と見込んでいたが、その2倍ほどが充てられる計算だ。

 このような状況から、増税の時期は先送りすべきという政治的な圧力が高まってくる。もっとも、剰余金は安定的ではない。一旦、景気が下振れすれば、税収が落ち込むだろう。大きな自然災害が起きれば、その復旧・復興のために剰余金を使わなければならなくなるかもしれない。

 増税を先送りして、今日、その剰余金を使い切ることは将来にそれを活用する可能性を失うことにほかならない。そうであれば、剰余金は「防衛力強化資金」等に貯めて将来に備える方が賢明ではないか。足元=現在だけではなく、将来を見据えることが防衛財源に限らず、我が国の財政を考えていく上で肝要だ。

 我が国を巡る安全保障は当面厳しい状況が続くことが見込まれる。防衛費の増加は一時的ではなく2027年度以降も対GDP比で2%と現在からほぼ倍増の水準が当面続くだろう。

「税収は過去最高、防衛増税なんて必要ない」は本当か?経済学者がキッパリ指摘『日本の財政―破綻回避への5つの提言』(中公新書) 佐藤主光 著

 財源確保に加え、ここでも優先順位を付けた予算配分の見直しが不可欠だ。防衛費の増額分の中には敵国からのミサイル攻撃等に対して国民を守る避難施設(シェルター)の建設や公共施設の強靱化が含まれる。果たして、防衛費と、防災事業としてインフラ整備を進めてきた「国土強靱化」と、どちらを優先すべきだろうか。

 いずれにせよ、今回の防衛費増は現在の我が国が中国など周辺諸国に比べてカネ(=防衛費)、モノ(=防衛装備品)、ヒト(=動員数)が、日米同盟があるとはいえ、著しく劣ってきたことが背景にある。相手に攻撃を断念させるよう「抑止力」を高めるには、自らの防衛力を強化しなければならないとされる。

 近年、防衛の分野では戦闘継続能力が重視されているが、これと同じく、持続可能な財政が必要だろう。対GDP2%の防衛費を支えるだけの国力(経済の成長力)と安定的な財源が求められる。