政府は追加歳出の3兆6000億円のうち、約4分の3は防衛力強化資金のほか、歳出改革や剰余金(予算の使い残し)等税外収入で賄い、残りの1兆円は、法人税、所得税、たばこ税を増税し、「財源は今を生きる世代全体で分かち合っていく」とした。

 政府・与党が取りまとめた「令和5年度税制改正大綱」によれば、法人税には税率4~4.5%の「付加税」を課して、7000~8000億円を確保する方針だ。所得税については東日本大震災(2011年)の復興財源である「復興特別所得税」を回す。同税は2013年からの25年間、所得税額に2.1%を上乗せして徴収されている。この復興特別所得税の税率を1.1%に引き下げ、その分を新たな付加税として課す一方、復興財源の確保のため、課税期間を14年間延長する。こうした所得税及びたばこ税の増税からは、各々2000億円程度の財源を賄うという。

 財政学では理論上、景気後退や自然災害等からの回復に必要な支出増、具体的には景気を底支えするための公共事業や被災者支援、災害で毀損したインフラ施設の復旧などは、「一時的」な支出として、その財源は当面、国の借金である国債で調達する。元利は、景気が回復し、災害から復興した後に償還すればよいと考える。しかし、防衛費に限らず、少子化対策など、一定の継続性のある支出増については借金ではなく、課税など恒常的な財源が望まれる。

赤字国債ありきの議論に
政治家も国民も馴れすぎた

 しかし、政府は「必要となる防衛力の内容の検討、予算規模の把握、財源の確保を一体的かつ強力に進めていく」とするが、歳出改革から捻出される金額や、実際の余剰金がどれくらい生じるかも定かではなく、捕らぬ狸の皮算用の感は否めない。

 一方で、防衛費増に伴う増税に反対する政治家も多い。建設国債が将来世代も受益する社会インフラ整備に充てられるのと同じく、防衛費も「次の世代に祖国を残す予算」として、ここで充てられる国債も恒常的な財源にすべきという主張だ。