また、強化する防衛力の中身より「先に財源論が出たので戸惑ったのが実態だ。順を追って説明し、多くの国民が納得した上で負担してもらうのが大事なプロセスではないか」(高市早苗・経済安全保障担当相(当時)2022年12月12日)など「順序が逆」との批判もある。

 もっとも、2022年度第2次補正予算の編成などでは「30兆円が発射台」との主張が与党政治家からあったが、このとき予算の中身より規模が先行することに「順序が逆」との批判は皆無だった。この違いは、財源の内訳にある。コロナ禍以降の補正予算は概ね赤字国債を財源としていたが、防衛費や少子化対策の財源には、増税が含まれている。結局、財源に「痛み」を伴って初めて、予算の中身に関心が払われることが窺える。

 政治家としては、国民に負担感のない借金で予算を賄う方が都合良い。それもあってか、結局、法人税・所得税等の防衛増税に関しては「2025年以降とすることも可能となるよう、柔軟に判断する」(基本方針2023)として、決定は先送りされた。防衛増税に賛成する政治家からすれば増税の「方針」を打ち出せたことになり、反対派からすれば増税時期を明記せず、「凍結」できた格好になる。どちらも自身に都合よく解釈可能な「玉虫色の解決」だったともいえそうだ。

 こうした財源問題に関わってくるのが、最近の堅調な税収の伸びだ。2022年度の国の税収が71兆円強となった。税収が70兆円台に乗るのは初めてで、3年連続で過去最高を更新した。企業の業績回復のほか、物価高の影響もあり、消費税、所得税、法人税がいずれも増収となっている。剰余金(予算の使い残し)は2兆6000億円余りに達する。

 皮肉なことにこの巨額の剰余金が、安定財源の確保、つまり増税の決断を危うくしかねない。財政法では、剰余金の半分は国債の償還原資にしなければならないが、残り1兆3000億円は防衛費に回すことができる。