たった2駅・3分の延伸を行っただけで
沿線の価値が激変した九州の路線は?
『最新!鉄道「混雑率」ランキング【全国版・ワースト34】1位は混雑率171%!常連の東西線はどうなった?』を封切りに、最新の鉄道「混雑率」ランキングに関して、「全国版」「首都圏版」「近畿圏版」「東海圏版」に分けて紹介してきた。ここで、ランキングには入らなかったものの、筆者が注目する混雑路線を紹介しよう。
〈福岡市営地下鉄・七隈線〉
23年度混雑率130%、19年度127%
05年に開業した福岡市営地下鉄・七隈線は、終点の天神南駅が空港線・天神駅と600メートルほど離れており、「中心部に出られない、乗り換えできない地下鉄」として、利用状況が著しく低迷していた。しかし23年3月、1.6kmの延伸で博多駅につながったことから乗客は激増している。開業からしばらくは、職員の目視で「平日朝には混雑率140%以上の状態が続いている」と発表されていたほどだ。
かつ、七隈線が博多駅とつながったことで、周辺人口が1~2割も増加しているという。新築マンションの建築が相次ぎ、中古一戸建ての価格上昇率が福岡市平均の3倍に跳ね上がった(「LIFULL HOME'S PRESS」調べ)。以前は、市営地下鉄の“お荷物”だった七隈線が、たった2駅・3分の延伸を行っただけで、沿線の価値が激変したのである。
今回の国交省の混雑率公表(24年8月)は、七隈線にとっては延伸開業後、初となった。結果は130%で、コロナ禍前19年度から3%増えた。増便により輸送力が1割程度上がっている状態で、ピーク時の1時間利用者は7302人→7934人と増えている。今回の調査期間は延伸開業してから約半年後だったが、路線バスからの乗客の転移が進む来年度以降に、この数字が変化するのか注目だ。
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さて、最後に注意点だ。そもそも国交省の混雑率の調査は、対象路線が長らく変わらず、計測基準や調査機関などは鉄道各社によってバラバラで不明瞭な点も多い。例えば、計測基準は「応荷重装置」(沈み込みによる重さの検知で大まかな人数を計測)もあれば、「3D技術(デプスカメラ)とAI技術で測定」や、「計測日に職員が目視」などがある。
車両の輸送力にしても、一定スペースを立席定員として換算するために「クロスシートをロングシート化」(中央部の車内スペースが広くなり、立ち客を詰め込んでも定員内で計算できる)など、車両を増結したり増便しなくても混雑率を下げる方法は色々とある。
鉄道の混雑率を、マイホームを購入する際の判断材料にする人もいるだろう。しかし、先に述べた通り、混雑率の基準は一定ではない。本当の混み具合を知りたければ、数字はあくまで参考程度にして、実際に乗車して混雑を体感してみるのが最も分かりやすいはずだ。