公園の中にポツリとある「階段」は
新人兵士が飛び降り訓練をした跡

 同じ兵器でも、北茨城の某所に発射跡が残る「風船爆弾」は、現代の視点からはいささか滑稽にすら映る。風船爆弾とは気球に爆弾を搭載し、アメリカへ向けて発射したものである。

 全国に3個所ある放球台座から飛ばされた風船爆弾は、偏西風にのって2~3日でアメリカ西海岸に着弾したそうだが、戦果は極めてわずかであったと伝えられる。なお、円形の台座の縁に見られる2カ所の四角い遺構は、気球に水素を充填するボンベの設置場所だ。

【戦後79年】千葉県の公園に残る「奇妙な階段」、その悲しすぎる目的とは〈写真付き〉冗談のような着想だが、実戦投入されていた風船爆弾の発射場所の跡 Photo by S.T.

 最後に、千葉県佐倉市で見つけた謎の階段遺構を紹介したい。戦国中期に築城された佐倉城の面影を残す公園内に、ぽつりと階段だけが立つ不思議な一角がある。これも立派な戦争遺跡である。

 佐倉はかつて歩兵第2連隊が駐屯した場所で、この階段は新人兵士が高所から飛び降りる訓練を行うために使われたものだ。高さは3mほどで、筆者のような高所恐怖症には確かに厳しい。

【戦後79年】千葉県の公園に残る「奇妙な階段」、その悲しすぎる目的とは〈写真付き〉佐倉城址公園内にある12段の階段遺構。園内には油の保管庫や病院、兵営の跡なども残されている Photo by S.T.

 このように、全国には多種多様な戦争遺跡が存在している。願わくは、いまのうちにそれらをきちんと整備し、安全性を確保した上で、多くの人の学びと発見に活用したいものである。