ANA・JAL 黒字回復後の修羅 #10Photo by Masami Usui

日本航空(JAL)はANAホールディングスを再び超えるのか――。特集『ANA・JAL 黒字回復後の修羅』(全13回)の#10では、コロナ禍の危機に直面したJALの財務を支えてきた菊山英樹代表取締役専務を直撃した。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 臼井真粧美)

貨物専用機の是非を巡り
最も激しい議論になった

――コロナ禍のさなかに国際物流の需給が逼迫し、航空貨物の単価が高騰。貨物の物流バブルが起きました。世界で貨物専用機を増やす航空会社が相次いだにもかかわらず、日本航空(JAL)は自社で貨物専用機を持たないまま。目下は需給が緩み始めましたが、なぜこの波に乗らなかったのですか。

 実は経営の会議で最も激しい議論になったテーマの一つで、右から左までいろいろな意見が出ました。その中で私は一番保守的だったかな。コロナ禍のちょっと前のときに貨物ビジネスがどれだけ苦労していたか、忘れたのかと。

 貨物は旅客以上にアップダウンがあります。今がいいからと専用機を手に入れたときには需要がもう落ちているなんてことが繰り返される世界ですから。

 ただ、コロナ禍前までは専用機を持つことなどあり得ないと思っていたけれど、コロナ禍を経験して若干、見方は変わりました。人が動かなくても物は動くという極端なケースを目の当たりにして、旅客が落ち込んだときに貨物が補完するという部分は否定できない。

「今がいいからいこう」にはふざけるなと返しますが、需要を確保できる見立てがあるのであれば、今後も議論していくことになるでしょう。

――今回は貨物専用機を持っていたANAホールディングス(HD)が物流バブルをより享受しました。ただ、会社全体で見ると、事業を積極的に拡大してきたANAHDはJALより財務が悪化しています。今後、JALは破綻前の時代のように、ANAHDを再び超えることがあるのでしょうか。