一つは追加就労希望就業者だ。より長い就労時間を希望する労働者のことを指し、短期的に労働供給の拡大余地がある。しかし、追加就労希望就業者は176万人と、コロナ禍前(2019年同期)に比べ14万人減少した。

 もう一つは潜在労働力人口だ。求職活動を行っていないものの就業を希望している、もしくは2週間以内に就業可能である人口を指し、同期間に8万人減少して33万人となった。

 そして、追加就労希望就業者と潜在労働力人口に失業者を合わせると、未活用の労働指標(LU4)が導ける。このLU4は5.8%と、1~3月期としては統計の算出を始めた18年以降で最低水準にある。それだけ、拡大が見込める労働供給も少ないということだ。

 企業は人手不足に対応するため、生産性向上に向けた投資を積極化している。もっとも、IT技術者や建設業などの熟練労働者の不足がボトルネックとなり、企業の計画ほどは省力化投資や情報化投資が進んでいない。

 こうした状況を踏まえると、政府は労働力の拡大に向けた施策を急がなければならない。具体的には、社会保障制度の見直しを通じたパート主婦の就業調整問題の解消や、外国人労働者活用の推進などに取り組む必要がある。

 さらに、経済全体として限られた労働力をいかに活用するかも重要である。リスキリング支援や、働き方の選択に中立な税制の構築など、雇用の流動化に向けた取り組みが求められる。

(日本総合研究所 調査部 副主任研究員 村瀬拓人)