今、就活市場で人気が高いコンサル業界には「ケース面接」と呼ばれる独特の入社試験がある。志望者の問題解決力や地頭力を測る試験だ。新刊『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』は、大手コンサルティングファームの入社試験に対して、現役コンサルタントや内定者の解答を集約した画期的な1冊だ。本稿では、コンサルでよく使われるマーケティングのフレームワークについて、本書コラムから一部を抜粋・編集して紹介する。

マーケティングの視野を広げる3つのフレームワークPhoto: Adobe Stock

マーケティングの最重要フレームワーク「STP」「4P」「4C」

 マーケティングとは、「顧客のニーズや欲求を理解し、それに応える価値を創造する全ての活動」であり、現状をとおして市場の機会を見極め、顧客との関係を築き、ブランドイメージを構築するという長期的な価値創造のプロセスを含みます。

 優れたマーケティング戦略は、製品やサービスの市場での成功を決定づける要因となります。

 ビジネスケースの対策として、マーケティング戦略の重要な考え方を押さえておきましょう。

STP:マーケティング戦略の基本コンセプトを定める

 マーケティング戦略の策定は、STPと後ほど解説する4P・4Cの2つのプロセスに分解できます。

 STPとは、①セグメンテーション(Segmentation)②ターゲティング(Targeting)③ポジショニング(Positioning)の頭文字を取ったものです。

 マーケティング戦略の総論とも言える、基本コンセプトを具体化するうえで不可欠なフレームワークです。

①セグメンテーション

 1つ目のセグメンテーションとは、様々な顧客が存在する市場をより管理しやすく効果的に扱うために、市場を類似のニーズや特性を持つ顧客グループに切り分けて考えることです(「セグメント」とは、ある性質の指標に基づいて切り分けた集団を意味します)。

 これは、顧客の年齢や性別、職業、年収、家族構成、居住地域、ライフスタイルなど、様々な要素に基づいて行われます。

 切り分け方によって今後の戦略が変わり得るため、実務では複数のパターンで切り分けて検討がなされています。

②ターゲティング

 2つ目のターゲティングとは、セグメンテーションで切り分けた顧客グループの中から、自社のミッションに適合し、強みを発揮することで明確に勝てるターゲット市場を絞り込むことです。

 ターゲット市場を選択する際には、当該市場の規模や成長性、競合環境、顧客にアクセスできるかなどの観点で評価します。

③ポジショニング

 3つ目のポジショニングとは、選択したターゲット市場において、自社と自社の製品やサービスがどのように認識されるべきかという「立ち位置」を明らかにすることです。

 顧客が重視することを確認し、競合との違いをはっきりさせ、自社の製品・サービスの独自の提供価値を見つけていきます。

 以上のSTPをとおして、「どの市場において、誰のニーズに、どのような価値を提供するか」というマーケティング戦略の基本コンセプトを具体化することができます。

4P:製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販売促進(Promotion)

 4Pは、製品(Product)価格(Price)流通(Place)販売促進(Promotion)の4つの要素から構成され、「どのような製品を」「いくらで」「どこで」「どうやって」売るのかというマーケティング戦略の各論を具体化するフレームワークです。

 これらのコントロール可能なマーケティング施策をバランスよくミックスしていくということから、「マーケティングミックス」とも呼ばれています。

マーケティングの視野を広げる3つのフレームワーク4P

4C:顧客にとっての価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)

 次に、4Cは、顧客にとっての価値(Customer Value)コスト(Cost)利便性(Convenience)コミュニケーション(Communication)の4つの要素で構成されます。

 4Pは売り手側の視点であるのに対して、4Cは顧客側の視点に立ったフレームワークとなります。

 マーケティングで重要なのは、常に顧客の心情を思いやることであり、4Pと4Cの各要素をそれぞれ対応させることで、顧客が求めていない独りよがりなマーケティング施策になることを防ぐことができます。

マーケティングの視野を広げる3つのフレームワーク4P4C

 以上をまとめると、マーケティング戦略の立案に際しては、まず、STPで市場をセグメントに切り分け、ターゲット顧客を選定し、競合との違いをはっきりさせて独自のポジションを設定します(ここまででマーケティング戦略の基本コンセプトが出来上がります)。

 次に、4Pと4Cの要素を用いて、具体的な製品開発や価格設定、流通戦略、販売促進戦略を計画し、これを顧客にとっての価値やコスト、利便性、コミュニケーションという観点から最適化します。

 このように、STPと4P・4Cを組み合わせることで、優れたマーケティング戦略を立案し、成果を最大化することができます。

(本稿は『問題解決力を高める 外資系コンサルの入社試験』から一部を抜粋・編集したものです)